令和3年7月12日に経済産業省から「発電コスト検証に関するこれまでの議論について」の発表がありました。
この発表では太陽光発電の発電コストが2030年には電源別で一番安くなることが明記されています。
この記事では太陽光発電と、その他の電源の発電コストを2020年、2030年それぞれで比較し、太陽光発電が一番安い電源となる理由と、それによる太陽光発電を設置されている方、太陽光発電の設置を検討している方への影響を解説します。
太陽光発電の発電コストって何?
「発電原価」通称「発電コスト」をご存知ですか?
発電コストとは、新たに発電設備を建設/運転した際にかかる施設の全体コストを、発電量で割った1kWhあたりの費用のことです。
新たに発電設備を建設/運転する際には下のように様々な費用が施設の費用に上乗せされます。
- 資本費 (建設費、固定資産税、設備の廃棄費用の合計)
- 事故リスク対応費(アクシデントに対応するコスト)
- 燃料費(単位数量当たりの燃料化カウに必要燃料量を乗じた値)
- CO2対応(発電のための燃料の使用に伴い排出されるCO2対策の費用)
- 運転維持費(人件費、修繕費、諸費の合計)
- 安全対策費(原子力関係設備・施設に係る安全対策の費用)
太陽光発電の発電コストは、太陽光発電のシステムを取り付ける際にかかる施設費と施工費を太陽光発電の発電量で割った1kWあたりのコストを示します。
太陽光発電の2030年の発電コストを他電源と比較してみた
経済産業省(総合資源エネルギー調査会)が2021年7月12日に開いた総合資源エネルギー調査会での発表によると、2030年には再生可能エネルギーである太陽光発電の発電コストが、電源別で最も安くなるという試算が示されました。
経済産業省が発表した15種類の、電源の発電コストは以下の通りです。
種類 | 電源 | 2020年発電コスト | 2030年発電コスト |
火力 | 石炭火力 | 12円台後半 | 13円台-22円台 |
火力 | LNG火力 | 10円台後半 | 10円台-14円台 |
火力 | 石油火力 | 26円台後半 | 24円台-27円台 |
原子力 | 原子力 | 11円台後半 | 11円台後半 |
再エネ | 陸上風力 | 19円台後半 | 9円台-17円台 |
再エネ | 洋上風力 | 30円台後半 | 26円台前半 |
再エネ | 太陽光(事業用) | 12円台後半 | 8円台-11円台 |
再エネ | 太陽光(住宅) | 17円台後半 | 9円台-14円台 |
再エネ | 小水力 | 25円台前半 | 25円台前半 |
再エネ | 中水力 | 10円台後半 | 10円台後半 |
再エネ | 地熱 | 16円台後半 | 16円台後半 |
再エネ | バイオマス(混焼) | 13円台前半 | 14円台-22円台 |
再エネ | バイオマス(専焼) | 29円台後半 | 29円台後半 |
ガス | ガスコジェネ | 9円台-10円台 | 9円台-10円台 |
石油 | 石油コジェネ | 19円台-14円台 | 21円台-25円台 |
上記表から確認できる通り、2020年時点では太陽光発電システムより安い電源は、複数存在します。
その中でも、発電コストが低く、主電源として実用性の高い電源は主に、石炭火力、LNG火力と原子力発電の三つがあります。
火力発電は安定性が高く、安く簡単に資源を集めることができます。そのため、発電をする際には一番コストパフォーマンスが良く、今も日本ではLNGや石炭といった、火力発電が主電源として使用されています。
賛否両論が今も飛び交っている原子力発電は震災が起きてから、日本ではあまり使用されていないのですが、世界的に見ると非常に安く、少ない燃料で大量の電力を発電できることから、コストパフォーマンスが一番良いと、言われてきました。
太陽光とその他の再エネ電源の発電コストの比較
太陽光発電以外にも、再生可能エネルギーの電源はあります。
太陽光発電以外の再生可能エネルギーが、2030年の太陽光発電に並ぶほどの発電コストが試算されるかを比較し、見ていきます。
陸上風力
量産効果と技術改善によって、発電コストが低減すると見込まれています。2030年までには、風力発電に必要なタービンが安くなり、建設費も同じく安くなると試算されました。
IRENA( International Renewable Energy Agency:国際再生可能エネルギー機関)による風力発電の建設費用の低減率は、2030年モデルプラントの建設費を2020年に比べて、国際価格が10%から47%まで削減されると試算されてます。
この低減率を、2020年の日本のプラントに適用すると、建設費34.7万円/kW だったところが2030年には18.4~31.2万円/kW まで下がると見込まれてます。
このように、近年のIRENAによる建設費低減シナリオに基づいて、日本の陸上風力発電もこの10年間で非常に安くなると見込まれました。
ただ、日本での陸上風力発電には懸念点があり、強風や落雷によって、部品の破損や故障する可能性もあり、ただでさえ設置できる平坦な土地が少ない日本では、タービンを設置できる土地の確保が難しいのです。
地熱発電、バイオマス
これからの10年で大きな変化はなく、現時点で技術環境変化や量産効果等によるコスト低減は見られません。
また、適地が少ないことから、コストがこれから上がる可能性なども考えられています。
中水力
中水力は低い電源コストではありますが、将来的に大きな変化はなく、資本費、運転維持費は同水準であると試算されました。
なぜ太陽光発電の発電コストが、こんなにも安くなるのか?
太陽光発電は2020年から2030年にかけて、太陽光モジュールの累積生産量が倍増することから、発電コストの大幅な値下げが試算されました。
パネル、パワコンや、その他にかかる費用から構成される設備費が、日独米の国立研究者による共同発表によると、1976年から2018年までに、導入された太陽光モジュールの平均コストは、累積生産量が倍増するごとに約23%低下しています。
このことにより、コスト低減率の見込みは、パネルの費用が45%減。(11.4円→6.3円)パネル以外の設備費が34%減(10.1円→6.7円)と試算され、今後の生産量が増えれば増えるほど発電コストも下がると見込まれました。
このような研究結果を踏まえて、今後累積生産量が倍増するごとに設備費が20%低下すると試算されました。
また、日本の太陽光発電システムの設備費は住宅用、事業用、いずれも世界的に見たら平均よりも高価格なのです。主な理由としては二つあり、
- 施工期間が海外に比べて長く、設計の際の人件費なども大きいから。
- 工場の機械の製造や現場での組み立て作業の効率が悪く、時間がかかるから。
これからの10年間で日本は世界との設置費用の差を大幅に縮めると想定されているため、発電コストの値下げにも大きな影響を及ぼし、2030年の太陽光発電の発電コスト低減に繋がったのです。
太陽光発電の発電コストが2030年に最安の電源になることの一般的な影響は?
太陽光発電が最安の電源になることで一般的には様々なポジティブな影響があります。
- 安く太陽光発電を設置できる。
- パネルの交換が安くなる(寿命を迎えたとき)
- 電気代が安くなる
- 導入が増え、環境にやさしい電気が発電できる
太陽光発電システムで得られる様々なメリットが今後、太陽光発電の発電コストが安くなることで、一般的に手の届く価格で今後提供されていくことが想定されています。
これからは太陽光発電が身近なものになり、屋根に太陽光発電が設置されていることが日常的になります。
そして、今後太陽発電がより身近なものになることで、累積生産量も今後増え続け、設備費がさらに安くなり、皆さんにとってよりお手頃な価格になる将来が、実現するのではないでしょうか。
太陽光発電の発電コストが最安になることでの明るい未来
太陽光発電システムはこれからの数年で生産量が増え、技術も向上することで発電コストは電源別で一番安くなると試算されました。
太陽光発電システムの累積生産量と技術の向上により、廃棄費用、運転維持費、設備利用率、稼働年数などの発電コストに影響を及ぼす要素が全体的に改善され、発電コストは電源別で一番安くなると試算されました。
発電コストが一番安くなることで、安く住宅の屋根に発電システムを設置することができます。そうすることで、多くの人が電気代を節約することができます。
また、今まで一番発電コストが安かった火力発電と比べても環境は優しく、クリーンなエネルギーを発電します。
これからは、今まで高コストがネックであった太陽光発電を安く取り付けることができるようになり、みなさんの屋根に降り注ぐ大量のエネルギー資源を無駄にすることなく、電気代を節約できる世の中になっていくのです。
一足先に住宅用の太陽光発電システムを導入しよう!
今回この記事を読んで、これから先発電コストが安くなったタイミングで太陽光発電システムを導入しようと思われる方も多いでしょう。
結論から言うと、今すぐに「住宅用太陽光発電は取り付けた方がいい!」です。
10年後発電コストが安くなると見込まれている太陽光発電を今導入する理由(メリット)として以下の5つがあげられます。
- 国からの補助金が出ていて、10年後に同様の補助金が存在するか未確定であるから。(条件によって適用される額は異なりますが、今の補助金は費用の3分の1をカバー)
- 2030年の売電価格(FIT買取価格)が半減する可能性があるから。
- 万が一災害が起きた際に非常電源として役立つ可能性があるから。
- 環境にいい電気を使用することができるから。
- 今、すでに屋根に降り注いでいる電気が勿体ないから。
また、太陽光発電は圧倒的にデメリットよりメリットの方が多く、実際に住宅用太陽光発電を設置した人の声を聞くと、圧倒的に満足している人の方が多いのです。
経済産業省によると、住宅用太陽光発電の導入件数は2018年末時点で約246万件を突破し、2008年の約45万件と比較すると10年間で5倍超と急速に伸びています。太陽光発電は、節約や投資などの経済面においても、環境面においても非常に[…]
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