太陽光発電の売電とは
太陽光発電の売電とは、太陽光発電システムで作った電気を、電力会社へ売ることをいいます。売電には、国(国民)が決められた金額で買い取ってくれる固定価格買取制度(FIT)と、電力会社が個別に設定した金額で買い取ってくれる相対・自由契約があります。
固定価格買取制度(FIT)は、太陽光発電を始めてから10年間適応される制度です。10年間が経過 (卒FIT) すると、相対・自由契約へと変更されます。
ソーラーパネルの寿命は、20年~30年あるいはそれ以上です。そのため、私たちが太陽光発電を始めるときには、この2つの制度を理解しておく必要があります。
固定価格買取制度(FIT)
国で決められた制度

固定価格買取制度(FIT)とは、太陽光発電で発電した電気を「決められた価格で」「決められた期間」必ず買い取ることを国が約束する制度です。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です
固定価格買取制度の仕組み(経済産業省)
そのため、太陽光発電を始めた場合には、ほぼ必ず思った通りに買取をしてもらえます。国が約束しているからこそ、誰もが安心して取り組めるような仕組みになっているのです。
FITの対象となるのは、太陽光発電だけではありません。5つの再生可能エネルギーが対象となっています。
- 太陽光発電
- 風力発電
- 水力発電
- 地熱発電
- バイオマス発電
見てわかる通り、他の発電方法は、個人では発電が困難なエネルギーです。太陽光発電は、FITの対象エネルギーの中で、唯一個人が発電することのできるエネルギーとなっています。
住宅用太陽光発電は「余剰買取制度」

住宅用太陽光発電の売電方法は、「余剰買取制度」と呼ばれる売電方法になります。
- ソーラーパネルで電気を発電する
- まずは自分の家で使う(自家消費)
- 使いきれなくなった電気を売電する
そのため、自分の家で使う電気を少なくすればするだけ、「売電収入」は多くなることになります。なるべく節電する意識を高めようという狙いになっています。
対して、自家消費をしない「全量売電制度」と呼ばれるものもあります。この制度は、設備容量が10kW以上の太陽光発電に適応されます。住宅用太陽光発電の平均的な設備容量は4.5kWのため、一般的な一戸建てて太陽光発電をお考えの方は、気にしなくていいでしょう。
制度 | 設置容量 | 対象 |
余剰買取制度 | ~10kW | 住宅用太陽光 |
全量売電制度 | 10kW~ | 事業用太陽光 |
2020年の売電価格は21円/kWh

住宅用太陽太陽光発電の売電価格は、年によって異なります。2020年は、21円/kWhと国によって決められました。
年々値下がりを続けていますが、その理由の一番は設置費用が下がったから。今では、「お得なのに誰もが始めやすい」発電方法となっています。
一般的な太陽光発電システムは、年間の売電電力量が3,500kWhほどになります。つまり、
3,500 × 21 = 73,500 円
この金額を、1年間の売電収入として受け取ることができます。
太陽光発電の特徴は、創った電気を「売れる」ということです。売電とは何か、どうして副収入を得られるのかを説明した次は、実際の「売電価格」について徹底解説します。売電価格が決まる仕組みがわかれば、今後どうなるかがわかります。さ[…]
買取期間は10年
FITの買取期間は、住宅用太陽光発での場合10年です。「10年間も国が保証してくれる」これが太陽光発電のポイントです。
そのため、先ほどの年間の売電価格73,500円は、10年間受け取ることができます。
73,500 × 10 = 735,000
FITを利用した売電収入だけで、73万円を手に入れることが可能です。
FITの原資は私たちの電気代(再エネ賦課金)
さて、73万も手に入ることがわかりましたが、これを払ってくれているのは誰なのでしょうか。
その答えは、国の税金、すなわち国民です。
実は、私たちが毎月払う電気代には、「再エネ賦課金」という税金が入っています。

2020年5月~2021年4月分までの再エネ賦課金は、2.98円/kWhです。数値だけで見たら小さそうですか?
一戸建ての世帯が年間に使う電気の量は、およそ5,600kWh。そのため、実に年間約1.7万円を税金で払っていることになります。
この再エネ賦課金1.7万円を各家庭から集めて、FITの原資としているのです。
ポイントは、太陽光発電をしていない人から税金を集めて、太陽光発電をしている人に渡していること。

しかも、この再エネ賦課金は年々金額が上がっています。
「太陽光発電を早く始めないと損」な仕組みづくりを、国が率先しておこなっているのです。
エネルギー自給率の向上、エネルギーミックスの実現が目的
さて、なぜこのような制度を国が実施しているか。それは、太陽光発電のような再生可能エネルギーを普及させたいからです。
再生可能エネルギーには、3つの特徴があります。
- 日本で発電できる
- 環境に良い
- 値段が高い
日本は、化石燃料が乏しい国なので、現在多くのエネルギーを海外からの輸入に頼っています。およそ、90%です。
そのため、日本で発電できる再生可能エネルギーは、エネルギー自給率を上げることのできる発電方法として期待されています。
また、再生可能エネルギーは、CO2の排出量が少ないエネルギーです。そのため、近年の流れである「SDGs」を達成するためには欠かせません。
このような理由から、日本は再生可能エネルギーを2030年、2050年に向けて一気に普及させる計画を立てています(第5次エネルギ―基本計画)。2030年の目標は、電源構成比率で22~24%となっており、まだまだ再生可能エネルギーが足りないのです。
売電期間終了後(卒FIT)-相対・自由契約

太陽光発電の売電を考えるときには、FITが終わった後の売電も考えておかなければなりません。FITは10年ですので、むしろ、FIT後の売電のほうが重要になります。
続いては、あまり注目されないけれども重要度の高い「FIT期間終了後」の売電について考えていきましょう。
民間企業が買い取ってくれる
FITとの大きな違いは、「民間企業が自分の利益のために」買い取ってくれるということです。
電気は価値のあるものなので、発電した電気を買いたい人はたくさんいます。
現在発電事業や売電事業を行っている会社は、買い取った電気をそのまま他に売ることができます。そのため、そのような民間会社と取引することが多いでしょう。
私たちと民間会社との取引なので、金額や条件は自由に決定されます。普通の市場と同じように電気が取引されるようになるわけです。
現在の買取金額は、10円前後

現在、電気を買い取ってくれる会社はたくさんあります。その買い取ってくれる金額がいくらかを表したのが上のグラフです。
多くの会社は10円前後に集中していることがわかります。
電力会社を選んだり、条件によっては、高い金額で買い取ってくれる会社もあるようです。
ただし、もちろんお気づきのように、FITの価格である21円/kWhよりも低い価格です。さらに、家庭用電力の販売価格である~30円/kWhよりも大きく低い価格となっています。
10年目以降の売電収入が減ってしまうことは、受け入れておきましょう。
今から始める人は10年後いくらで買い取ってもらえる?
問題なのは、この金額は今後どうなっていくのか?ということです。
特に、今から太陽光発電を始める人にとっては、10年後以降の買取価格が重要になります。
この価格を判断するために、電気がこの瞬間も実際に取引されている「卸市場」がどうなっているかを見てみましょう。

日本全国では、今も電気が売買されています。その電気を売り手と買い手が、いくらで電気を取引しているか?を表したのが「システムプライス」です。
2012年から2019年までの推移が上の図です。5~20円/kWhの間を動いています。先ほどの10円/kWhというのは、ある程度妥当な金額ですね。
システムプライスは、様々な要因によって変化しますが、この金額が今以上に下がることもあり得るでしょう。逆に、燃料費の高騰などによって、15円/kWh、20円/kWhとなることもあるかもしれません。
ただし、本当の問題は、昼の時間は値段が安くなりがち。ということです。現時点でも、0円/kWhになることもしばしばあります。
太陽光発電が増えれば増えるだけ、昼間の電気は余りがちですので、相対的に価値は低くなります。
重要なことは、「FITが終わった後の売電価格」もしっかりシミュレーションする必要があるということです。
あるシミュレーションサイトでは、10年後以降の買取価格を「8.5円/kWh」にしていると記述しながら、本当は「12円/kWh以上」に設定しています(2020年5月11日現在)。
このようなシミュレーションに引っかかってしまうと、予想よりも数十万円も損する結果になってしまいます。
この記事は、「【連載企画】太陽光発電が得か損か、シミュレーション開発者が全て解説します」の一部です。太陽光発電の1番のメリットとして、「お得」ということが挙げられます。しかし、本当にお得なのか?ちゃんと儲かるのか?心配な方は多[…]
FIT後の売電収入もしっかり計算する必要があるでしょう。
仕組みが大きく変わる可能性
実は、今後数年で、住宅用太陽光発電の仕組みは大きく動くことが予測されています。
- 蓄電池の値段が下がる
- 電気自動車と連携するようになる
- 水素発電、CCS、CCUなどの新しい電力活用方法が広まる
- 電気の個人間売買が広まる
これらが実施されることで、電気を売る側の人にとっては、より高い価格で売れるチャンスがやってきます。
まずは10年のFITで安心をいただきながら、その間の技術開発に期待するのが最も賢い方法だと考えています。
合計の売電収入はいくら?
さて、簡単ではありますが、売電収入でいくら入るのかざっと計算してみましょう。
FIT後の売電金額が10円/kWhの場合
合計の売電収入は126万円
FIT | FIT後 | 合計 | |
年数 | 10年間 | 15年間 | 25年間 |
売電単価 | 21円/kWh | 10円/kWh | - |
年間収入金額 | 73,500円 | 35,000円 | - |
売電収入 | 735,000円 | 525,000 | 1,260,000 |
FIT後の売電金額が5円/kWhの場合
合計の売電収入は99.8万円
FIT | FIT後 | 合計 | |
年数 | 10年間 | 15年間 | 25年間 |
売電単価 | 21円/kWh | 5円/kWh | - |
年間売電収入 | 73,500円 | 17,500円 | - |
売電収入 | 735,000円 | 262,500 | 997,500 |
FIT後の売電金額が15円/kWhの場合
合計の売電収入は152万円
FIT | FIT後 | 合計 | |
年数 | 10年間 | 15年間 | 25年間 |
売電単価 | 21円/kWh | 15円/kWh | - |
年間売電金額 | 73,500円 | 52,500円 | - |
売電金額 | 735,000円 | 78,7500 | 1,522,500 |
条件によって売電金額は大きく変わる
各条件で、大きく結果が変わることが分かったと思います。
再度結果をまとめてみると、FIT後の条件が変わっただけで、売電収入が50万円も異なる可能性もありあす。
FIT後の売電価格条件 | 売電収入 |
15円/kWh | 152万円 |
10円/kWh | 126万円 |
5円/kWh | 99.8万円 |
売電と自家消費を合わせて、しっかりシミュレーションしよう
太陽光発電の売電制度は、私たちにとって大きなメリットになります。
しかし、FITの間の売電収入がいくらなのか?FIT後にはいくらになるのか?をしっかり計算しなければ、損になってしまうこともあり得ます。
また、売電だけではなく、「自家消費」のメリットや「費用」のマイナス分も同時に考えなれけばなりません。
これらの計算方法はとても複雑です。そして、先ほどお伝えしたように、嘘をついたり都合のいいデータを使ったりする業者がたくさんあります。
信頼できるシミュレーションを通じて、売電収入がいくらになるか、ぜひ試してみて下さい。