【保存版】蓄電池の最適な容量を決める方法

FIT期間の終了や、台風などの災害対策への注目にともなって、太陽光発電×蓄電池の導入を考える方が増えてきています。

しかし、蓄電池と太陽光発電を組み合わせるときに、どれくらいの容量にしたらいいのかや、容量によってどのような制限があるのかはあまり知られていません。

さらに困ったことに、蓄電池の容量としてどれくらいが最適なのかは、人によって、パネルの大きさいによっても変わってきます。

蓄電池にまつわるよくある質問

質問
  • どのような蓄電池のシステムが自分に向いている?
  • 太陽光発電だけで生活するなら、太陽光パネルと蓄電池の容量はどれくらいにする必要がある?
  • 自家消費を増やすならどれくらいの蓄電容量が必要?
  • 太陽光パネルは自分の家の屋根の大きさで足りるの?

まず、このような質問に対する答えは、先ほど言った通り「人それぞれ」です。そして、実際に自分の場合だとどうなるかを調べるには、細かい場合分けと計算が必要になります。

そこで、今回の記事では簡単に、「一般的な条件」で太陽光発電+蓄電池を導入した場合にどうなるかを説明していきます。

日本の停電時間を把握しよう

停電

蓄電池の容量がどれくらい必要なのかは、蓄電池を入れる人が何を求めているかによって変わります。

その前段階として、日本でどれくらい停電が起きているかをおさらいしておきましょう。

日本の停電回数は、年間平均0.14回

日本は、災害大国と思われていますが、実際のところほとんど停電が起きないことで有名です。

停電回数
停電回数の国際比較(東京電力より)

少し見えにくいかもしれませんが、日本はグラフの一番左です。2017年においては、平均して「0.14回」しか停電が起きていません。すなわち、7軒に1軒以下でしか停電が起きていません。

つまり、日本では、1年を通して全く停電が起きない家のほうが圧倒的に多いということになります。

他の棒と比較していただいてわかる通り、日本は「めったに停電が起きない国」といえるのではないでしょうか。それほど電力会社がしっかりしている表れです。

では続いて、停電の回数ではなく、停電の時間を見てみましょう。

日本の停電時間は、1回あたり140分前後?

停電時間
実は大きく違う、各国の年間停電時間(資源エネルギー庁)より

上の図は、「1年を通じて」停電時間がどれくらあったかを表すデータです。

日本では、普段は「一軒当たり年間20分前後の停電時間」であることがわかります。ただし、実際は停電自体があまり起きていないため、一回の停電時間はこれより長いことが想定できます。

単純計算で、この「20分」を先ほどの「0.14回」で割れば、1回あたりの停電時間は20分÷0.14=約140分となります。

すなわち、日本における停電の、おおよその規模感としては以下のように考えられます。

  • 1年間で、7軒のうち1軒で停電が起きている
  • 一回の停電時間は、約140分

イメージがついたでしょうか。

停電が一気に起きるリスク

ただし、いままでの話はあくまで「多くの(ほとんどの)年において」の話。

さきほどのグラフを見ていただくとわかる通り、2011年の停電時間は1年間で「約500分」と、他の年の10倍、20倍以上に増えています。

これは皆さんご存じの通り、東日本大震災の影響によるものです。日本では、ある程度の災害は見込まれていますが、「極端に大きい災害」が起きることもまた事実です。

また、日本全体としては被害は大きくないものの、ある地域では局所的に大災害となるような可能性もあります。

そのような場合においては、停電時間は140分よりも増える可能性はあります。実際に、2011年や近年の台風の被害で、数日を超える長時間の停電に困った方もいらっしゃることでしょう。

地震被害
東日本大震災時の停電状況(内閣府防災情報のページより)

東日本大震災が起きたときの東北地域の停電状況を表したのが上の表です。

実に、20%の人が、3日以上の停電を経験されたことになります。また、6%の人に関しては、一週間以上の停電を経験されました。

現在の社会では電気がない生活は考えられないため、ほとんど生活の基礎が成り立たない状況と考えていいでしょう。

蓄電池の容量はどれくらいが必要なのか

蓄電容量

いままでの話をもとに、今回は蓄電池の容量として、以下の4つのパターンを想定してみたいと思います。

  1. お昼の停電であれば、不自由はあるものの電気が使える
  2. ほとんどの停電時に、不自由なく電気が使える
  3. 大規模な災害が起きても、数日は不自由なく電気が使える
  4. 電力網に関わらず、いつまでも不自由なく電気が使える

1が最も軽い対策、4が最もしっかりした対策です。

それぞれの場合において、どのようになるかみてみましょう。

「蓄電池なし」お昼の停電であれば、不自由はあるものの電気が使える蓄電容量

まずは、もっとも軽い対策であるときの蓄電容量です。

その答えは、「0kWh」。すなわち、「蓄電池を入れない」になります。

ただし、その条件が1つあります。太陽光発電システムと、パワーコンディショナーの「自立運転機能」があることです。

自立運転機能さえあれば、太陽光発電が発電できる時間においては、停電しても電気を利用することができます。

ただし、普段と同じように利用することはできません。

コンセントは専用のものに限られることと、一度に使える電力は1.5kWになってしまいます。これは、多くの家電を一度には動かせない電力であることを意味します。

  • 夜の停電はあきらめる
  • 専用のコンセントでもいい
  • 一度に使える電力は少なくてもいい

このような条件下においてなら、蓄電池は「いらない」が正解になります。

「3.2kWh」ほとんどの停電時に、不自由なく電気が使える蓄電容量

続いては、ほとんどの停電時に対応できるようにする場合です。かつ、「不自由なく」という条件を入れてみました。

ここでいう「不自由なく」とは、「停電が起きても普段と同じように生活ができる」ことを意味します。

先ほどの条件と比べると、一気にハードルが上がります。ただし、ほとんどの人がイメージしている「蓄電池システム」といえば、この条件になるのではないでしょうか。

先ほどお話しした日本の停電時間を参考にすれば、「140分」停電が起きても耐えることが必要です。

では、「140分」耐えるのに必要な電気はどれくらいでしょうか。

時間別電力消費量
首都圏戸建て住宅の時別電力消費量(環境省より)

上の図は、いろいろな時期における戸建て住宅の時間別電力消費量を表しています。

深夜ではあまり電力を利用しておらず、夜間のタイミングで電力をしようしていることがわかります。

また、5月などの過ごしやすい季節よりも、1月のような暖房を使う時期のほうがたくさん電力を使用していることがわかります。

今回のテーマは「ほとんどの停電時において耐える」ことですので、最も電気を使う「1月の夜間」において停電が起きても問題ないことを考えましょう。

2013年の1月の夜間では、おおよそ1時間に1,000~1,200Whの電力を利用していることがわかります。寒いので暖房を使いながら、テレビに電灯に携帯の充電にと、多くの方が電気を利用しているのでしょう。

仮に、1時間に使う電力が1,100Whだったとき、140分間(2.3時間)で使っている電力量は、

  • 1,100Wh×2.3=約2,500Wh=約2.5kWh

となります。

すなわち、2.5kWhの蓄電池容量があれば、ほとんどの停電に対して不自由なく暮らせるということになります。

ただし、蓄電池というのは、容量の100%充電ができるわけではありません。80%しか充電できない場合には、

  • 2.5kWh÷0.8=3.2kWh

の蓄電容量が必要になります。

もちろん、人によって普段電気を使う量は違いますし、停電時間も変わってきます。もしも、電気を使う量が多い家庭や、停電が長く起きやすい地域では、これ以上の蓄電容量が必要になります。

ただし、1つの目安としては、「3~4kWhほどの蓄電容量があればほとんどの停電に耐えることができる」ことを分かっていただけたと思います。

「30kWh」大規模な災害が起きても、数日は不自由なく電気が使える

続いては、「ほとんどの停電」ではなく、突発的な被害が起きたときの停電でも耐えることができる蓄電容量を考えてみましょう。

ただし、条件としては、災害によって太陽パネルが破損して、発電自体もできなくなったと想定しましょう。

東日本大震災では、3日で8割が復旧をしました。そこで、「3日間停電でも耐えられる蓄電容量」を今回の基準とします。

平均的な家庭の1か月の電力使用量は、東京電力のデータによると約250kWhになります。

電力使用量
家庭1棟あたりの電力使用量と契約電力推移(TEPCOより)

この中には、マンションや一人暮らしも含まれるため、一戸建ての大人数世帯であればこれより多くの消費量であることが想定できます。

仮に1か月の電力使用量が300kWhであれば、1日の使用量は

  • 300kWh÷30=10kWh

になります。

電気が全く通っていない時、かつソーラーパネルも壊れてしまっているときであれば、1日を不自由なく過ごすためには「10kWh」が必要と分かりました。

結果、もしも3日間停電でも耐えられる蓄電容量は、

  • 10kWh×3=30kWh

になります。さきほどの3.2kWhに比べると、およそ10倍の数値となりました。

ただし、実際には、蓄電池の中身から電気を使うだけではありません。太陽光発電システムが壊れていなければ、同時に発電も可能です。そのため、ここまでの蓄電容量は必要ないでしょう。

また逆に、「停電が起きるタイミング」で蓄電池が必ず満タンとも限りません。もしも蓄電容量が少ないタイミングで災害が起きてしまったら、これよりも少ない期間しか耐えれないかもしれません。

先ほどと同じように、あくまで今回の条件における目安の蓄電容量であるということは覚えておいてください。

「パネル5kW×蓄電池30kWh」電力網に関わらず、いつまでも不自由なく電気が使える

最後の条件は、いわゆる「オフグリッド」と呼ばれるシステムになります。

停電だろうが、無人島だろうが、電力網とお構いなしに、不自由なく電気を使った生活ができる場合を考えましょう。

言い換えれば、自分の発電した電気だけで、24時間365日生活ができるという条件です。

まず、この場合には、蓄電池だけでは成り立ちません。必ず太陽光発電システムが必要になります。それも、自分が使う電気以上を発電できなければなりません。

もしも先ほどの電力使用量(1か月で300kWh)を利用するのならば、1年間の電力使用量は3,600kWhになります。

そのため、太陽光発電システムは年間で3,600kWh以上の発電量が求められます。さらに、次のような条件も踏まえなければなりません。

  • 「蓄電ロス」が発生する
  • 冬の間の発電量は、夏に比べて少なくなる

発電した電気を蓄電池を経由して使うときには、電気のロスが発生します。充電量の約10%となりますので、おそらく発電量の7%ほどは蓄電ロスとして失われます。

  • 3,600kWh÷(1-0.07)=3,871kWh

また、年間通して同じ発電量ではありません。夏に発電した電気を冬まで取っておくわけにもいきませんので、冬の一日においても発電した電気と使用する電力が同等になる必要があるでしょう。

平均に対して、冬に使う電力は1.2倍、冬に発電する電力は0.9倍とすれば、必要な年間発電量は

  • 3,871×1.2÷0.9=5,161kWh

となります。

地域や太陽光パネルの角度にもよりますが、5kWほどの太陽光発電システムであればまかなえる発電量といえるでしょう。

以上により、1つ目の条件として、太陽光発電システムが5kW以上ということがわかります。

続いて、蓄電池の容量を見ていきましょう。

夏に発電した電気を冬まで取っておくことはしませんが、雨の続いた日の電力は晴れの日に取っておく必要があります。

雨の日の発電量を仮に0kWhとすれば、先ほどと同じように1日耐えるためには10kWhの蓄電容量が必要になります。

特に発電量の少ない冬の時期において、昼の間ずっと天気が悪い確率はどれくらいでしょうか。

2019年の東京では、6月~7月におよそ1か月間雨が降り続いた時期がありました。ただし、そのような場合でも、24時間ずっと天気が悪いということはほとんどありません。どこかで太陽は出ているものの、雨も降っている状況です。

おそらく、先ほどと同じように30kWhもあれば少なくとも蓄電容量がなくなるタイミングは少ないのではないでしょうか。

この容量に関しては、実際の計算はしておらず、感覚の値です。しかし、現実問題として、そのような少ない確率を考えて蓄電池の容量を増やすなら、「太陽光発電以外の発電装置」を導入するほうが簡単であったりします。

そのため、今の段階では、2つ目の条件として「蓄電容量30kWh以上」としておきます。

必要な蓄電容量まとめ

条件蓄電容量
お昼の停電であれば、不自由はあるものの電気が使える0(必要ない)
ほとんどの停電時に、不自由なく電気が使える3.2kWh
大規模な災害が起きても、数日は不自由なく電気が使える30kWh
電力網に関わらず、いつまでも不自由なく電気が使える30kWh+
パネル5kW

今までの話で分かることは、少しの可能性までをもリスクとして管理するにつれ、一気に必要な条件が増えるということです。

しかし、その「少しの可能性」こそが、排除したい不便であることもまた事実です。

自分がどの程度の不便なら耐えられるのか、どのような生活をイメージしているのか、今回の具体例を参考にしてみてください。

経済的に最適な蓄電容量はどれくらいなのか

経済的に最適な蓄電容量

さて、今までの話は、「災害対策」としての蓄電池の容量の側面です。

一方で、「経済的に最適」な蓄電池の容量は全く変わってきます。

特に、FITの売電期間が終わり売電価格が下がった方が気になるのは、「蓄電池を入れると得なのか?」「どの容量だと一番得なのか?」ということでしょう。

経済的に最適な容量は「0kWh(蓄電池なし)」

まずは、残念な結論です。

経済的に最適な蓄電容量は、「0kWh」すなわち、「蓄電池をいれない」になります。これは、ほぼすべての条件でこうなります。

蓄電池を入れるとお得です!というのは、全て嘘であることは間違いありません。

実際に、「工事費+蓄電池」の価格がおおよそ下の価格以下にならなければ、蓄電池による経済的なメリットはないと言えます。

蓄電容量MAX価格
4.2kWh25万円
6.2kWh36万円
8.9kWh47万円
13.9kWh60万円

この価格は、あくまである条件での計算結果ではありますが、他の条件にしたからといって「蓄電池は損」が変わることはありません。

細かい計算条件などは、他の記事で述べていますので確認してみてください。

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「将来的には」入れたほうが最適になる

現在は入れないほうが経済的に合理的な判断であることは間違いありませんが、将来的には「入れたほうが得になる」場合がやってきます。

なぜなら、蓄電池の値段は今後下がることが予測されているからです。

では、どのくらい値段が下がったら、どのくらいの容量をいれればいいのでしょうか?

これに関して、蓄電池単価と最適な蓄電容量に関してデータがまとまっていますのでご紹介します。

新エネルギー等導入促進基礎調査(資源エネルギー庁より)

上の図は、横軸が蓄電池の単価を表しています。単位は「万円/kWh」です。

縦軸は、蓄電池の容量を表しています。単位は「kWh」です。

たとえば、赤い枠で囲まれた部分においては、

  • 蓄電池単価が「6万円/kWh」であれば、最適な蓄電容量は「3.3kWh」(もしくは「4.9kWh」)になる

ことを意味しています。

すなわち、条件のいい場合においても、
5kWhの蓄電池の価格が「30万円であるときにはじめて、経済的にもっとも特になる

ことを意味しています。

さきほど示した表のちょうど真ん中あたりに入っていますね。やはり計算すると、このくらいの値になるようです。

蓄電容量価格
4.2kWh25万円
6.2kWh36万円
8.9kWh47万円
13.9kWh60万円

また、「蓄電容量10kWh」も入れるような場合においては、蓄電池の単価は「2万円/kWh」である必要があります。

すなわち、「10kWhでたったの20万円」です。最も安い蓄電値であっても、工事費込みで100万より安くなることはないと思います。

なぜ10kWhの蓄電池だとより安くなるかは、蓄電池の使わない部分が多すぎるからです。容量を無駄にしてしまっている部分が多いということです。

まとめ:蓄電容量の決定方法

以上の結果から、蓄電池の容量は以下のように決定するとよいでしょう。

  • 経済的にお得にしたい人:0kWh(いれない)
  • 昼の停電時にも少し電気を使えるくらいでいい人:0kWh(いれない)
  • ほとんどの停電時に、不自由なく電気を使いたい人:3.2kWh
  • 大規模な災害が起きても、不自由なく電気を使いたい人:30kWh

少なくとも、蓄電池を入れると損にはなります。災害対策のために、そのお金を払っていいと思う人だけが買うようにしましょう。

早く価格が安くなり、「災害対策をしながら」「しかもお得になる」そんな世の中がくるといいですね。

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