太陽光発電の導入を検討する際に最近よく聞くようになった「HEMS(ヘムス)」。
言葉を聞いたけどよくわからない!という方が大半なのではないでしょうか。
この記事では、そもそもHEMS(ヘムス)とは何か、導入することによってどのようなメリットがあるのか、反対にデメリットはないのか等について解説していきます。
HEMS(ヘムス)とは?【結論:家で使うエネルギーの管理システム】

HEMS(ヘムス)は「Home Energy Management System」の略で、直訳すると「家庭内エネルギー管理システム」です。
- HEMS(ヘムス) :Home Energy Management System
- BEMS(ベムス) :Building Energy Management System
- FEMS(フェムス) :Fatory Energy Management System
- CEMS(セムス) :Community Energy Management System
対象や規模によって呼び方は異なりますが、基本的な概念は同じになります。
HEMSでできること
HEMSは家庭内エネルギーの管理システムだ!と言われてもいまいちピンとこない方が多いのではないでしょうか。
各メーカーによって細かい内容は様々ですが、大まかにHEMSを導入することによって以下のようなことができるようになります。
家庭内における様々なエネルギーを「見える化」
日頃家庭で電気やガス・水道等を使用する際、何にどれくらい使ったのか細かくチェックしている方は少ないでしょう。
また毎月送られてくる電気料金は総使用量のみが記載されています。
HEMSを導入することによって今まで知らなかった各家庭のエネルギー使用状況を見える化し、把握することができます。
例えば、パナソニックのスマートHEMSでは以下のようなことを見える化できます。
- 電力使用量
- ガス使用量
- 水使用量
- 太陽光の発電量
- エアコン運転の状態確認
- 照明の状況確認
- IHクッキングヒーターの状態確認
- 蓄電池の残容量
- エネファーム(またはガス発電)の発電量
- エコキュート、エネファームの出湯量
- 電動窓シャッターの状態確認
- 天井埋込型空気清浄機の状態確認
電気の使用量は機器別、時間帯や日別、月別ごとにも確認できるため、「先月に比べてお昼にエアコンで使いすぎている….。」といったことも把握できます。
ほぼリアルタイムで確認できるため、直ぐに改善することも可能です。
また現在契約中の電気プランと電気の使用状況を鑑みて、最適な電気料金プランも診断してくれます。
さらに外出先からスマートフォンで電気の使用などから子供が在宅しているかなども推測できるため、共働き家庭の安心にも繋がります。
エネルギーの最適制御・操作
単純に見える化するだけではなく、エネルギーの最適制御することもできます。
例えば、あらかじめ設定した目標電力量を超えると自動で冷房の温度を弱くしたり、照明の明るさを調整したりしてくれます。
いままでは感覚で電気・ガス・水道などを使っており、請求が来た時点で「先月は使いすぎちゃったな…..。」と反省していたのが、HEMSを導入することで自らコントロールすることができるようになります。
また、スマートフォンやパソコンと連携することで宅内・宅外問わず遠隔操作することもできます。
スマートスピーカーと連携させることも可能で、音声による操作も可能です。
例えば、帰宅時間直前に湯船のお湯張りをしておいたり、エアコンや床暖房のスイッチを入れておくこともできます。
参考までに、パナソニックのHEMSで接続できるものは以下の通りです。
【宅内・宅外で操作】
- エアコン
- 照明
- 床暖房
- 電気錠
- エネファーム
- 天井埋込型空気清浄機
- エコキュート
- 電動窓シャッター
- レンジフード
- ガス給湯器/ハイブリット給油・暖房システム
【運転終了や開始忘れ、長期運転停止情報などのプッシュ通知】
- 炊飯器
- 食器洗い乾燥機
- 洗濯機
- 冷蔵庫
【連携できる機器】
- 太陽光発電
- 蓄電システム
- IHクッキングヒーター
- スマートメーター
- 温湿度センサー
HEMSに必要なもの

HEMSは各家電などのエネルギー量を「計測」し、そのデータをインターネット通じて、「管理」する仕組みになっています。
その機能を果たすために必要となる機器を説明します。
HEMS対応住宅分電盤
通常の分電盤(ブレーカー)は以下の役割を担うものです。
- 家庭内に電気を分ける
- 漏電を検知し、電気を遮断する(漏電遮断器)
- 電気を限界を超えて使いすぎると電気を止める(安全ブレーカー)
HMES対応の分電盤は上記に加えて、回路ごとの電力測定機能と通信機能が加わります。
既築の家にはHEMS対応でない分電盤があるケースが多いですが、計測ユニットを設置すれば分電盤を取り換える必要はありません。
HEMSゲートウェイ
HEMS対応住宅分電盤や計測ユニットで計測した各データを無線で受け取りモニターに表示させ、そして制御や操作、指示などの通信を行うHEMSの中心的役割を担う機器です。
モニター機能付きのものと、モニター機能がついていないものタイプが分かれています。
モニター
モニターは実際に利用する方が各データを確認にしたり、操作するコントローラーの役割を担います。
スマホやPCにてモニター機能を果たすことも可能な場合が多いです。
HEMSのメリット・デメリット

メリット
節電を感覚ではなく、機能的に行える
いままで節電しようと思っても感覚的に使用量を減らすよう努めたりするくらいしかできませんでした。
しかしHEMSを導入すれば目に見えるデータで確認でき、そして自動的に制御することで強制力を持った節電も可能になります。
家電の利便性が高まる
遠隔操作ができることによって、各家電の利便性が上がります。
帰る頃にちょうど部屋が暖かくなっていたり、お風呂が沸いていたらやはり嬉しいです。
また太陽光発電+蓄電池を利用している家庭では、気象データや日々の電気使用状況などのAIで解析し、効率の良い電気利用をすることも可能です。
単純に「楽しい」
節電などを行うにあたって、目に見えて成果がわかるのは楽しいです。
またその日のエネルギー消費量に応じたポイントやスタンプがあったりする機器もあり、小さい子供に楽しく省エネ教育することもできます。
デメリット
経済合理性に乏しい
HEMSは初期費用が高めという意見もあります。
例えば、パナソニックのHP上のHEMS価格は、HEMS対応住宅分電盤であるスマートコスモとAiSEG2(7型モニター機能付)の合計で188,500円(税抜)です。
加えて工事費もかかりますので、高いという印象も理解できます。
省エネ効果で費用をペイできるかどうかわからないため、導入を決めかねている方も多いようです。
全ての電化製品が接続できるわけではない
注意点としてはこの制御や操作は電化製品がHEMSと通信可能である対応機種であることが必要です。
具体的には「ECHONET Lite」というHEMSの通信規格に対応している必要があります。
続々と対応機種は増えていますが、対応機種でない場合は制御や操作はできません。
HEMSのメリットはそもそもの各データが基礎にあってこそのものなので、既築に後付けで設置する場合は対応していない家電が多いという可能性もあります。
2030年までにHEMSが全世帯に!?

HEMSは国全体で推し進める動きが加速しています。
政府が発表した「グリーン政策大綱」では、2030年までに全世帯にHEMSを普及させることを目標としています。
日本は2030年には温室効果ガスの排出量を2013年比で26%削減することを目標に掲げていますが、そのために家庭からは40%も削減しなければなりません。
しかし各家庭に投げやりで任せていても達成は難しく、地域全体でエネルギーを管理していく必要があります(CEMS)。
地域全体でエネルギー管理することで、電力供給が安定化させたり、大幅な省エネが実現できると考えられています。
ネットワークで繋がる地域のエネルギー
家庭の電力消費量を自動で検針し、ネットワークにつなげるにはスマートメーターが必要になります。
現在、各電力会社がこれまでのメーターとスマートメーターに取り換える作業を行っており、2024年にはスマートメーターの普及が100%を目指しています。
各家庭のHEMSとスマートメーターがセットとなることで地域全体でのCEMSが完成するわけです。
太陽光発電とHEMSは相性◎

太陽光発電を導入した方はできるだけ多くの売電収入を得るために、節電意識が高める傾向があります。
HEMSでエネルギーの見える化や、自動制御を行えば、売電収入を増やすためと思えば、前向きに取り組めるのではないでしょうか。
また、太陽光発電自体と接続し発電量をチェックできるため、何か太陽光発電システムに不具合がないかを監視する役割も担ってくれます。
家庭と地域の省エネ、エネルギーの最適化のために、HEMSを利用してみてはいかがでしょうか。