「出力制御(出力抑制)」とは、みなさんが設置した太陽光発電システムからおこなう電力会社への電気の流通を停止または抑制することです。
当然、売電できるはずだったものができなくなりますので、出力制御が起きると太陽光発電を設置している方にとっては一大事です。
今回はそんな出力制御のなかでも、住宅用太陽光発電(10kW未満)に特に絞って解説していきます。
なぜ出力制御(出力抑制)が必要?
出力制御を受けてしまった方は理不尽に感じる方もいるかもしれません。
では、なぜ出力制御がなされるのでしょうか?
もちろん、無意味に出力制御をおこなっているわけでも、電気を買い取りたくないからでもありません。
出力制御を行う理由は「バランス調整」と「送電線の容量」のためです。
電力会社は電力量の需要と供給のバランスを保たないといけないという原則があり、そのバランスが保たれているからこそ私たちは安定的に電気を使うことができています。
もし電力の供給量が多すぎてしまうと、周波数が上昇してしまい、大規模停電や電気設備の不調をもたらしてしまう可能性があります。
出力制御を行うということは供給側を抑えることですので、電気を使いたい人があまりいないという状況にあわせてバランスを調整していると言えます。
出力抑制・制御のルール
優先給電ルール
一口に「電力」といっても、太陽光発電のほかにも、様々な電源による電力があります。
例えば、太陽光発電や風力発電は天候などによっても発電量が変わってきますので、バランスをうまく保つのも大変です。
そこで、あらかじめ決められた「優先給電ルール」に基づいて、1から5の順番に出力制御を行うこととしています。
- 火力発電(石油、石炭、ガス)の出力制御、揚水の活用
- 他地域への送電(連携系)
- バイオマスの出力制御
- 太陽光・風力の出力制御
- 長期固定電源(水力、原子力、地熱)の出力制御
長期固定電源は技術的に出力制御が難しい電源です。
太陽光発電は4番目の優先順位となっているため、1~3の出力制御をして、なおバランス調整が必要な場合に太陽光発電も制御がなされることになります。
出力制御上限のルール
以前は500kW以上の大規模太陽光発電設備に対してのみ、電力の供給量が需要量よりも上回る場合、年間30日を上限に無保証で出力を抑制できるというルールでした(30日ルール)。
しかし2015年の法改正により、現在は「30日ルール」から「360時間ルール」または「指定ルール」に変更されました。
また、この法改正により、家庭用を含む500kW未満にも対象が広がりました。
360時間ルール
30日ルールから、無償での出力制御の上限を年間360時間という時間単位にしたのが「360時間ルール」です。
この30日ルールから360時間ルールへの移行に伴って、住宅用太陽光発電にも範囲が広がったため、住宅用ではこの「360時間ルール」がベースになります。
指定ルール
「指定ルール」とは時間や日数の上限がなく、出力抑制を要請できるルールです。
指定ルールは指定電力会社の接続可能量を超えて太陽光発電を導入する場合に適用されます。
遠隔出力制御(出力抑制)導入の義務化
実際に出力制御が行われる際に、何か操作などが必要なのかと思われる方がいるかもしれません。
しかし、実際は出力制御に対応したパワーコンディショナーなどを設置することで、電力会社による遠隔操作によって行います。
それに伴ってコストもかかっていたため、出力制御対応の場合は売電単価が2円ほど高かったのですが、現在はコスト面もだいぶ改善されたため全て同一の売電単価となっています。
標準装備で出力制御対応しているパワーコンディショナーなども増えました。
出力制御対応が必要な地域は、遠隔制御するための設備設置が義務付けられています。
固定価格買取制度(FIT)の事業計画ガイドラインの遵守事項においても、「接続契約を締結している一般送配電事業者又は特定送配電事業者から国が定める出力制御の指針に基づいた出力制御の要請を受けたときは、適切な方法により協力すること。」という文言が盛り込まれています。
守らない場合は売電ができなくなってしまう可能性もありますので注意しましょう。
【10kW未満】地域別に見る出力制御(出力抑制)
出力制御は地域ごとの電力会社エリアによって適用ルールが異なります。
基準は電力会社との契約受付日がベースになります。
なお、地域の電力の需給バランスの管理は大手電力会社がおこなっています。そのため売電先が新電力であっても出力制御の対応は別問題です。
今回は住宅用(10kW未満)に絞ってみてみましょう。
東京電力・関西電力・中部電力エリア
東京電力・関西電力・中部電力エリアの出力制御は契約受付日に関わらず、「対象外」となっています。
そのため、東京電力・関西電力・中部電力エリアに太陽光発電設置をしている住宅は現時点で出力制御対応機器の設置義務はありません。
これは、管内の人口が多く、電力需要もおおきいためです。
北陸電力エリア
- 2015年3月31日以前:出力制御対象外
- 2015年4月1日~2017年1月23日:360時間ルール
- 2017年1月24日以降:指定ルール
中国電力エリア
- 2015年3月31日以前:出力制御対象外
- 2015年4月1日~2018年7月11日:360時間ルール
- 2018年7月12日以降:指定ルール
四国電力エリア
- 2014年12月2日以前:出力制御対象外
- 2014年12月3日~2016年1月22日:360時間ルール
- 2016年1月25日以降:指定ルール
沖縄電力エリア
- 2015年3月31日以前:出力制御対象外
- 2015年4月1日以降:360時間ルール
沖縄電力では接続可能量をまだ超えていません。
超過すると見込まれる日以降は指定ルールが適用される予定です。
九州電力・北海道電力・東北電力エリア
- 2015年3月31日以前:出力制御対象外
- 2015年4月1日以降:指定ルール
10kW未満は出力制御を過度に気にする必要はない
出力制御については対応機器設置義務のある地域についてはその準備が必要ですが、10kW未満の住宅用太陽光発電においては過度に出力制御の有無を心配する必要はありません。
なお、過去出力制御が実施されたのは、九州電力1社のみです。
しかもこれは種子島という本州から独立した地域ですので、もともと電力需要の少ない種子島において、種子島内で発電した電力を使い切らないといけない状況でした。
本州の電力会社ではお互いに電力を譲り合って供給ができるため、使いきれないほど余るという可能性も低くなっています。
また、頻度が少ないだけでなく、実際に出力制御が行われる際は、容量の大きい太陽光発電から順番になされます。
そのため、住宅用太陽光発電まで出力制御を行う場合は実際にはほとんどなく、過度に出力制御のことを気にする必要はないと言えます。