過積載と聞けば、トラックなどに最大積載量を超えて大量の荷物を積むことをイメージする方が多いのではないでしょうか。
このトラックなどの過積載は非常に危険で法律でも規制されていますが、太陽光発電における過積載は正しく行えば総発電量をアップすることが可能です。
もちろん違法ではありません。
この記事では、そもそも過積載とはどのような仕組みなのか、正しく行うにはどうすればよいのか等について解説していきます。
太陽光発電における「過積載」とは?
太陽光発電における過積載とは、パワーコンディショナー(以下、パワコン)の容量よりも多くの太陽光パネルを設置することです。
つまり過積載とはパワコン容量に対して何枚のパネルを設置するのか、または太陽光パネルの合計容量に対して何台のパワコンを設置するのかという設計の話になります。
また、どの程度過積載がなされているのかを表す場合、「過積載比(率)」が用いられます。
過積載の仕組み
太陽光発電は太陽の光エネルギーを太陽光パネルで電気エネルギーに変え、パワコンで家庭で使用できる電気に変換したり、売電できるような形に調整したりしています。
太陽光パネルとパワコンの出力できる電気の量はそれぞれ異なり、パワコンは容量を超えて太陽光パネルから受け取った電気を処理することはできず、その分は捨ててしまうことになります(ピークカット)。
逆にパワコンの容量よりも太陽光パネルの容量が小さい場合、パワコンの出力を持て余してしまうことになります。
太陽光発電の前提として、天気や気温などによって発電量は変化してしまします。
太陽光パネルの容量として用いられる定格出力はJISで定められた条件下での最大値を指します(最大10%は超える可能性あり)。
そしてその条件は理想的な条件を基に算出されています。
そのため、過積載をしない場合多くの時間パワコンの容量を持て余してしまうことになってしまうので、パネルを多く設置しようということなのです。
過積載のメリット
全体のトータル発電量が増える
先述の通り、過積載をすることで朝や夕方、悪天時などの発電量を底上げし、全体の発電量をアップさせてくれる点が最大のメリットです。
それは裏を返せば、パワコンの容量をパネルより少なくし、効率的に稼働させていることに繋がりますので、コストを下げているという考え方もできます。
また、影がかかることを見越したり、雪国で雪がパネルにかぶさることが想定し、過積載を利用することも有効です。
停電時の自立運転時に安定した電気供給
台風や地震などの災害による停電時に太陽光発電の電気を使えるようにするパワコンの機能を自立運転機能と言います。
自立運転機能を利用し発電した電気を利用する際、利用する家電などの消費電力が、発電した電力を超えてしまうと、過負荷によってパワコンが停止してしまいます。
イメージとしては電気の使い過ぎでブレーカーが落ちてしまうのと同じです。
よって過積載をすることで、朝や夕方、悪天時などの低日照時間帯でも発電量を底上げすることで安定した電気供給に繋がることができます。
過積載のデメリット
メーカーの保証を受けられなくなる可能性がある
パワコンは各メーカーによって10~15年程度の製品保証がついており、製品自体が原因で不具合や故障などがあった場合取り換えてくれます。
しかし、パワコン容量よりも太陽光パネルの容量を多くすることで少なからずパワコンに負荷がかかることをメーカー側は示唆しており、各メーカーごとに最大過積載比率を定めている場合が多いです。
一般的には120~130%まで、なかには200%以上を保証対象としているメーカーもあります。
例えば、オムロンのパワコンは一定の条件下であれば250%以上のスーパー過積載も可能としています。
必ずしも費用対効果が良くなるとは限らない
ここまでの説明をみると、過積載で太陽光パネルを載せれば載せるほど良いと感じる方もいるかもしれませんが、それは違います。
それだけ太陽光パネルの購入費用が増えるからです。
また、太陽光パネルを増やせば増やすほど、ピークカットによるロスの絶対量は増えます。
費用とピークカットを加味しても発電量にメリットがあるのであれば問題ないですが、あくまで費用対効果を最大化することが重要ということは覚えておきましょう。
事後に太陽光パネル増設する場合は注意
10kW以上の太陽光発電システムにおいて、固定価格買取制度(FIT)の認定取得後に太陽光パネルを増設する場合は注意が必要です。
資源エネルギー庁は過積載自体は禁止にしていませんが、以下のような範囲を超える変更を行う際は、売電価格がその年のものに下げられてしまいます。
増設・・・3kW未満かつ3%未満
減設・・・20%未満
基本的に売電価格は太陽光発電の調達コストを基に決められている側面が強いため、価格が下がったものを導入する場合はその時の売電価格を適用するという考えです。ただしこれが適用される場合、以前から設置されていた部分についても新しい売電価格になってしまいます。
ちなみに10kW未満の場合は対象外ですでの、ほとんどの住宅用太陽光発電は問題ありません。
過積載を行うときは意味があるのか見極めよう
過積載は現在一般的になってきているため、とりあえずたくさん太陽光パネルを設置しておけばよいとの認識が生まれています。
しかし、大切なことはあくまでコストに対してどれだけ効率よく発電できるかということです。
しっかりシミュレーションを行ったうえで、意義のある過積載となるように行いましょう。