蓄電池はその名の通り、電気を蓄えておき、必要な時に必要な分だけ使うことができる機器です。
太陽光発電のみの場合発電した電力を溜めておくことはできないため、太陽光で発電した電気を夜間にも利用したい場合は蓄電池が必要になります。
太陽光発電の導入と共に検討されることが多い「蓄電池」ですが、そもそもなぜ必要なのか、どのような種類があるのかを詳しく調べたうえで購入を決めた方はどれくらいいるでしょうか。中には、「訪問販売で言われるがままに500万円以上....。[…]
この記事ではそんな蓄電池はどのような仕組みなのか、なぜ価格があまり下がらないのか、今後はどうなのかについて解説していきます。
蓄電池の仕組み【放電と充電】
蓄電池にも様々な種類がありますが、基本的に仕組みは同じです。
蓄電池の中身は2つの電極(主に金属)と電解液というもので構成されています。
この2つの電極には、負極(マイナス極)と正極(プラス極)があり、負極は電子を放出する役割を、正極は電子を受け取る役割を担っています。
蓄電池はこの2つの電極と電解液の化学反応により、電気を使えるように取り出したり(放電)、電気を蓄えておくために取り込んだり(充電)しています。
負極は酸素などと結合することによる酸化反応によって電子が放出され、正極は電子を吸収することで還元反応が起こります。
つまり、負極で発生した余剰電力が正極で起こる還元反応によって不足する電子を補うように移動しています。またこれは完全放電するまで電気を発生することができます。
完全放電してしまった電池の内部は、もう化学反応が起きない状態で電池内の物質が平衡状態となっています。
しかし、正極から電気を抽出し、負極に電子を与えるような化学反応を起こすことで放電前の状態に戻すことができます。つまり放電時とは逆の向きに電子を流すことで、繰り返し利用できるのです。
蓄電池の種類
蓄電池には様々な種類がありますが、住宅用太陽光発電において一般的に利用されるのは現状「リチウムイオン電池」です。
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は正極にリチウム金属酸化物、負極に炭素を用いた電池です。
住宅用太陽光発電に適した小型・軽量かつ環境負荷の少ない材料を用いています。
寿命は10~15年程度です。
また、電池を使い切らずに充放電を繰り返すことで、電池が短時間だけ使用することを記憶し、次に使うときすぐに電圧が下がり機器が止まったりする現象をメモリー効果と言います。
リチウムイオン電池はこのメモリー効果による悪影響がない高性能電池で、携帯電話やPCにも利用されています。
レドックスフロー電池
レドックスフロー電池は、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池です。
レドックス(redox)は、還元(reduction)と酸化(oxidation)を合わせた言葉です。
電極や電解液の劣化が少なく約20年の長寿命で、発火性の材料を用いていないことや常温運転が可能であるため安全性の高い電池です。
電力系統用蓄電池に適した特性を持っており、今後太陽光発電などの再生可能エネルギーの拡大に必要となる技術として期待されています。
エネルギー濃度が低いため小型化には向かないですが、昨今では電解液の高濃度化技術が進み、少しづつ小型化の期待もできるようになってきています。
NAS電池
ナトリウム硫黄電池とも呼ばれており、正極に硫黄、負極にナトリウム、電解質にファインセラミックスが使われています。
両極が液体で電解質が固定であるため、上図のイメージとは少し違います。
メモリー効果があまりなく、安定した充電量があり、容量の割に小型であることが特徴です。
寿命は15年程度です。
価格自体は高額ですが効率が良いため、主に工場や大規模な電力施設で利用されます。
一方、NASは水と反応すると爆発的に延焼する危険性があるため、管理が必須です。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に希硫酸を用いた蓄電池です。
自動車のバッテリーなどにも使われており、安価で充放電の回数によって寿命が変化しない点が特徴です。
メモリー効果もなく、寿命は17年ほどと比較的長いです。
一方、小型化が難しく、充放電のエネルギー効率が低いというデメリットもあります。
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は正極にオキシ水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウム等のアルカリ水溶液を用いた電池です。
過充電や過放電に強く、急速充放電が可能である一方、自然と電気が放電していく自己放電が大きく、寿命も6~7ねんと短いです。
主にモバイル機器のバッテリーとして使われます。
蓄電池の価格なぜ高いのか
主に住宅用太陽光発電で使われるリチウムイオン蓄電池の価格推移をみると、2008年から2018年の11年間で約半額になっています。
にも拘わらず、なぜまだ蓄電池の価格が高いと感じる方が多いのかというと、「原材料が希少なのに、需要がたくさんある」からです。
つまり需要に対して、供給が追い付いていないのです。
リチウムイオン電池はレアメタルであるコバルト酸リチウムやリン酸鉄リチウムが必要ですが、他国でも採れる国は限られています。
また先述したパソコンや携帯電話の他にも、家電のほとんどに使われており、まさに世界各国で取り合っている状況です。
最近話題によく上がる電気自動車(EV)にもリチウムイオン電池は使われており、その需要はますます上がることが予測されています。
リチウム資源はどこで・どうやって採れるの?
主な産出国はオーストラリア、チリ、アルゼンチン、中国などです。
鉱物が豊富なオーストラリアでは鉱石ペグマタイトからコンデンサに使われるタンタルを生成する際の副生物として回収されていますが、7割のリチウムは塩湖かん水(水が渇いて濃くなったもの)を精製して作られます。
塩湖のかん水から回収・・・チリ、中国、アルゼンチンなど
鉱物から回収:オーストラリア、ブラジル、ジンバブエ、ロシア、ポルトガルなど
日本のは100%輸出に頼っていますが、その80%はチリからで、リチウム資源の世界最大の採掘場所となっているのがアタカマ塩湖(チリ)です。
宝が眠るウユニ塩湖
塩湖と言えば思い浮かべる方が多いのが「ウユニ塩湖」です。
世界御半分を占めるリチウム埋蔵量と言われながら、ほとんど開発がされていません。
その理由は「政治」です。
長きに渡って政権を握ったエボ・モラレス元大統領は先住民族出身であることから、ボリビアが貧しいのは海外に富を奪われたからであるとの意識があり、資源の国有化をする政策をとってきました。
しかしボリビアにはその採掘技術は持ち合わせていないため、宝の山が眠った状態となっています。
そんなエボ・モラレス大統領が2019年10月20日に大統領選したものの、結果が不正に操作されていたとの疑惑から非難が集まり、メキシコへ亡命しました。
その後は反モラレス派で白人系のヘアニネ・アニェスを暫定大統領として承認されたため、今後ウユニ塩湖でのリチウム採掘が拡大することが期待されています。
海水からリチウム採掘!?
勘の良い方はお気づきかもしれないのが、塩湖から採掘しているのであれば海水からも取れるのではないかということです。
地上のリチウム埋蔵量は約3,000万トンなのに対して、海水には約2300億トンという比べ物にならないほどのリチウム資源が眠っています。
ほぼ無尽蔵と言っても良いでしょう。
特に100%輸入から頼っている島国日本にとってはまさに理想の採掘方法です。
この海水からのリチウム抽出については研究が行われており、2014年に世界で初めて日本が成功しています。
しかし海水中に含まれるリチウム濃度は低く、精製にかかるコストがかなり高く採算が取れないのが現状です。
今後の技術革新により、海水からリチウム抽出が低コスト化することによって、蓄電池の価格も低下してくれることに期待しましょう。
リチウムイオン電池に代わる次世代蓄電池も
先述したウユニ塩湖や海水のように新たな抽出方法が模索されているリチウムイオン電池ですが、新たな次世代蓄電池の研究も複数されています。
全個体蓄電池
「仕組み」で記載した通り、蓄電池は基本的に電解液と電極による電子の移動を利用していますが、全個体蓄電池はすべての部品が固体でできた蓄電池です。
液体を使わないことにより発火事故の可能性が減り、安全性の向上します。
また、熱にも強く、100度近くでも作動するため、より実用性が高い電池として期待されています。
リチウム空気電池
リチウム空気電池は戦機を生じさせる化学反応に酸素を利用する電池です。
正極の化学反応に電池の外にある空気を利用するためその分サイズが小さくなるのに加えて、同じ重さのリチウムイオン電池と比べて5~10倍の電気を蓄電できるようです。
非常にエネルギー密度が高いため、電気自動車や電気飛行機の電池としても期待されています。
ナトリウムイオン電池
住宅用太陽光発電の蓄電池として今後期待されているのが「ナトリウムイオン電池」です。
ナトリウムイオン電池は、正極にナトリウム鉄マンガン、負極に炭素を用いるため、希少で高価なレアメタルフリーな蓄電池となります。
日本でも無尽蔵にある資源で、安価であるため、ナトリウムイオン電池の実用化ができれば、住宅用太陽光発電の蓄電池の低価格化も見込めます。
一般的にリチウムの方が電池としての性能は高く、ナトリウムでは理論上かなわないものの、既に9割までに到達している開発機関もあり、実用化もそう遠くないとされています。
今後の太陽光発電の発展を握る蓄電池
世界で脱炭素が叫ばれる中、太陽光発電による「自家消費」が注目されています。。
そしてその自家消費には蓄電池が切っても切り離せません。
リチウム資源の採掘拡大や新技術による蓄電池の低価格化が重要であり、今後のますます重要になっています。
今後太陽光発電の導入を検討する方はこういった動向にもぜひとも注視していきたいところです。