道を歩いていると最近よく見かけるようになった太陽光発電。しかし、そもそも太陽光発電とはなにか?どういう仕組みなの?と聞かれても、答えられる人はあまりいないのではないでしょうか。
- どのように発電するの?
- どのような特徴があるの?
- 今後はどうなっていくの?
- 結局太陽光発電でなにがかわるの?
「そろそろ始めようと思うけど、あまり仕組みを知らない」。そんな人のために、太陽光発電を始める前に知るべき「5つのポイント」をご紹介します。
太陽光発電の「目的」
電気を「買う」から、電気を「創る」へ
太陽光発電とはなにかを一言でいうと、「電気を創るシステム」です。今まで購入するのが当たり前だった電気を、「太陽の光」を利用して作ることができます。
私たちの生活において、電気が欠かせないことはわざわざ説明をする必要がないでしょう。それくらい大切な電気を創るのが太陽光発電です。
太陽光発電を始めて電気を創るようになったひとは、全員が「発電事業者」と呼ばれます。イメージとしては、外食だけだった人が、自炊を始めて「シェフ」になるのに近いですね。
創った電気は「自家消費」と「売電」
「創った電気」をどうするか。電気の使い道は主に2つです。
- 自家消費(節電)
- 売電
太陽光発電が始まると、この2つの言葉はずっとついて回ります。それぞれについて仕組みをみてみましょう。
自家消費
自家消費とは、「創った電気を自分の家で利用すること」です。
上の図を見てください。青い線は、普段私たちが使っている電気を表しています。どちらかというと、夜に電気を使う量が多いですよね。
そして、赤い線で表されているのが、太陽光発電による発電です。太陽がでている昼の間にたくさん発電がされます。
太陽光発電で発電された電気は、私たちが普段使っている電気として利用ができます。それが、図の濃い色がついている部分です。
太陽光の営業文句では「自家消費をあげたほうがお得ですよ」とよく聞かれますが、「自家消費を上げるメリット&デメリット」を知ったうえで判断しましょう。
売電
売電とは、「創った電気を電力会社に売ること」です。電気はとても価値のあるものなので、売ることもできてしまいます。
上の図を見てみましょう。赤い線は太陽光発電による発電を表していましたが、発電量が多い昼には「発電量>使用量」となるタイミングが存在します。
このようなタイミングでは、創った電気を使いきれないということです。
そのときに、余った電気は電力会社に販売ができるのが太陽光発電のいいところです。
先ほどの例でいうと、「自炊を始めたけれど、創りすぎて余った料理はお店が買い取ってくれる」というわけです。素晴らしいですね。
太陽光発電の「発電システム」
続いては、太陽光発電の一番重要な仕組み「発電システム」をみていきます。
太陽光発電の機能は、太陽のパワーを電気に変換することです。さらに、その作った電気を、私たちに使いやすいようにしなければなりません。
これらの機能を発現するために中核となるのが、4つの装置です。
- ソーラーパネル(太陽光パネル)
- 接続箱・集電盤
- パワーコンディショナー
- 分電盤
さらに、太陽光発電の発電とは直接は関係ありませんが、相乗効果を生み出してくれる装置もあります。
- モニター
- 蓄電池
これら6つの装置について、どのような役割を持っていて、私たちにとってどう役立つのかを見ていきましょう。
ソーラーパネル(太陽光パネル)
太陽の光を電気に変換する役割を持っているのが、ソーラーパネルです。「太陽光発電」と聞いたときに、みんなが思い浮かべる装置でしょう。
ソーラーパネルは、他にも様々な呼び名で呼ばれます。
- ソーラーパネル
- 太陽光パネル
- 太陽光モジュール
- 太陽電池モジュール
- 太陽電池アレイ
呼び方はたくさんありますが、どれも「太陽電池」がたくさん集まってできていることを表しています。
ソーラーパネルは、太陽光発電を始めるには、最も重要な装置です。
ソーラーパネルの役割
ソーラーパネルのもっとも重要な機能が、光エネルギーを電気エネルギーに変えるということです。
これは、ソーラーパネルの「光電効果」と呼ばれる仕組みによります。
太陽光エネルギーを「直接」電気エネルギーに変換できる優れものです。
ソーラーパネルの種類
ソーラーパネルは、太陽電池がたくさん集まってできています。
その太陽電池は、化学的にいくつかの種類があります。どの太陽電池を使っているかで、ソーラーパネルも分類ができます。
- シリコン系
- 結晶系
- 単結晶
- 多結晶
- 薄膜系
- 結晶系
- 化合物系
- CIGS系
簡単な特徴としては、以下のようなものがあります。
種類 | 特徴 |
単結晶 | ・単結晶シリコンの基板を利用 ・コストが高い ・変換効率が高い |
多結晶 | ・小さい結晶を集めた多結晶の基板を利用 ・コストが低い ・変換効率が悪い |
薄膜系 | ・アモルファスシリコンや微結晶シリコン薄膜の基板を利用 ・大きいサイズで量産可能 ・効率が低い |
GIGS系 | ・銅やインジウムなどを原料とし、薄膜の基板を利用 ・将来性が高い ・インジウムの資源量が少ない |
私たちの家にのせるソーラーパネルの多くは、単結晶もしくは多結晶の太陽電池を利用しています。
ソーラーパネルを選ぶポイント
ソーラーパネルの機能は、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変えること。
その機能がどれだけ高いか?を表すのが、「変換効率」です。
変換効率が高ければ高いほど、同じ太陽光エネルギーでもたくさん発電することが可能になります。
私たちが普段見ているソーラーパネルの変換効率は、現在20%ほどです。しかし、様々なメーカーが高機能のパネルを目指して努力しています。
ソーラーパネルの変換効率が高まれば、より太陽光発電の価値が高まることとなり、メーカーの研究動向には目が離せません。
ただし、注意しておきたいのは、「消費者にとって」変換効率はさほど重要ではないことです。変換効率とは何かを勘違いして、損をしないようにしましょう。
住宅に太陽光発電を導入することを決めたとき、まず迷うのが「どのメーカーの太陽光パネルにするか」ということなのではないでしょうか。出力、色、大きさ、重さ....etc判断基準をあげたらキリがありません。そこで、この記事では、[…]
接続箱・集電盤
ソーラーパネルは、何枚かが別々に電気を発電します。それらの電気を1本にまとめる役割を持っているのが、接続箱や集電盤です。
1本にまとまった電気は、このあとパワーコンディショナーに運ばれます。
他にも、電圧や電流を調整したり、雷の影響を吸収したりといった役割を果たしています。
- ソーラーパネルが発電した電気をまとめる
- 故障や事故が起きたときの逆流を防止する
- 雷ノイズを吸収する
- パワーコンディショナーに電気を届ける
パワーコンディショナー(パワコン)
電気には、2つの種類があります。「直流電力」と「交流電力」です。
ソーラーパネルで発電した電気は、「直流電力」です。しかし、私たちが普段使っている電気は、「交流電力」です。
そのため、直流電力を交流電力に変換する必要があります。この機能を持っているのが、パワーコンディショナーです。
パワーコンディショナーは、他にも呼び名があり
- パワーコンディショナー
- パワコン
- PCS(Power Conditioning System)
- PVインバータ
等と呼ばれます。
パワコンの役割
パワコンの役割は、直流電気を交流電気の変換以外にもいくつかあります。
代表的な役割としては以下のものでしょう。
役割 | 内容 |
電気の種類を変換 | 交流電力を直流電力に変換し、普段の電気を同じように使えるようにする |
電圧上昇抑制 | 電圧を調整し売電できるようにする |
系統連系保護 | 停電時の対応など、家電やほかの系統を守る |
自立運転機能 | 停電時も電気を使えるようにする |
特に私たちに関係が深いのが、最後の「自立運転機能」です。
これがあることで、災害時などの非常用電源として太陽光発電を使うことが可能になります。「太陽光発電の電気を停電時にどうやってどの程度使えるか」を決めているものです。
パワコンの種類
パワコンにも、いくつか種類があります。
種類をわける重要な分類ポイントをまとめました。
分類ポイント | 内容 |
出力容量 | ・どれくらいの電気を交流電力に変換できるか ・変換できない分は、捨てることになる ・ソーラーパネルの発電量と合わせて設定する |
変換効率 | ・直流電力を交流電力に変換できる割合 ・変換効率が高いほど、ロスが少なくエネルギーに無駄がない |
設置場所 | ・屋内用と屋外用がある ・住宅用太陽光発電の場合には、スペースなどによりどちらかが選択される |
ソーラーパネルと比べると重要度が低いと思われがちなパワコンですが、その役割は非常に重要です。変換効率は発電量に直接影響をしますし、大きさによっては設置に気を遣わなければなりません。
太陽光発電といえば、屋根の上に目立つ太陽光パネルばかりに目が行きがちですが、パワーコンディショナー(以下、「パワコン」)も太陽光発電とは切っても切れない重要な役割を担う存在です。パワコンは、「PCS(Power Condition[…]
分電盤
パワーコンディショナーで交流に変換した電気を、家の配線に分電させます。これがあることで、各部屋で電気を使うことができるようになります。
ブレーカとも呼ばれ、太陽光発電をしていないご家庭にも存在しているものです。ただし、太陽光発電を始める際は、専用の分電盤が用意されます。
太陽光発電の設置業者が設定までしてくれますので、購入段階で特に気にする必要はないでしょう。
モニター
太陽光発電の発電システムとは関係がありませんが、発電の「見える化」をしてくれるものがモニターです。
パワコンとつながっていて、住宅のよく見えるところに置かれます。
モニターの役割
モニターがあることで、様々なことが「見える化」できます。
- 発電量
- 自家消費量
- 売電量
- 蓄電池の状況
- 時間別の電気使用量
- スマホからチェック可能
また、太陽光発電+HEMS機能が搭載されたものであれば
- どの電化製品が電気を使っているか
- エアコンがどれくらい使っているか
- 冷蔵庫がどれくらい使っているか
- 誰の部屋が一番電気を使っているか
などがわかるようになります。
蓄電池
太陽光発電は、太陽が出ている日中にしか発電ができません。さらに、日中に発電する電力は、私たちが日中に消費する電力よりも多くなりがちです。
そのため、発電した電気を「貯める」ことができれば、昼に発電して余った電気を夜に活用することができます。
この機能を持ったものが、蓄電池です。
必須の装置ではありませんが、災害対策をより一層安心なものとしてくれる機械です。ただし、「蓄電池に電気を貯めるくらいなら電気を捨てたほうが得」であるこことも事実です。
蓄電池のメリット・デメリットをしっかり理解して、必要ならば導入を検討するようにしましょう。
太陽光発電の「種類」
太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変えるのは同じでも、太陽光発電にはいろいろな種類があります。
代表的な種類をご紹介します。
住宅用太陽光発電
屋根置き型
一番身近なタイプの太陽光発電でしょう。
通常の屋根のうえに架台を取り付け、その上にソーラーパネルを設置します。
この家太陽光発電してる!というのが一目でわかるのがポイントです。
建物一体型(ソーラールーフ)
太陽光発電の「見た目」が大きく異なるのが、建物一体型の太陽光発電システムです。
特にソーラールーフと呼ばれる太陽光発電システムは、通常の屋根と見分けがつかないという特徴があります。
通常の太陽光発電システムと比較すると費用が高くなります。再生可能エネルギーを使いたいが、見た目で躊躇している人にはお勧めです。
ただし、現時点においてシェアはほとんどありません。
産業用太陽光発電
地上設置型(メガソーラー)
「メガソーラー」ともよばれる太陽光発電です。
広い土地に太陽光発電を大量に置くことが可能です。
その結果、住宅用の太陽光発電と比較して、発電コストが安くなります。
ただし、発電した電気をその場で使用することができないため、蓄電機技術や送電技術、それらのコストが追加的にかかります。
集光型
小面積の高効率な太陽電池を使います。
レンズなどで光を集めて発電させたり、太陽の向きに合わせて自動で回転したりします。
その他の太陽光発電に比べて、高い発電効率を達成することが可能になります。
太陽光発電の「特徴」
太陽光発電の発電の仕組みを解説しました。
では、他の発電方法と比較したときに、太陽光発電はどのような特徴を持っているでしょうか。
再生可能エネルギー
太陽光発電の電気は、太陽のエネルギーを利用したもの。そのため、化石燃料のようになくなる心配がありません。また、それらの燃料と違い、発電時にCO2を出しません。
上の図は、発電方法ごとのライフサイクルCO2排出量です。
ソーラーパネルの製造時などにはCO2を排出してしまいますので、0というわけにはいきません。しかし、既存の火力発電に比べると、圧倒的にCO2の排出量は低くなります。
オフグリッド
太陽光発電は、仕組みが簡単です。また、エネルギーのもととなる太陽は、地球のどこでも降り注いでいます。
そのため、好きな場所で発電が可能です。
好きな場所で発電が可能ということは、「発電場所」と「消費場所」を同じにすることができます。
もしも発電場所と消費場所が同じだったら、今の電力システムに欠かせない送電線がいりません。
このように、送電線から離れた状態のことを、「オフグリッド」と呼びます。
インフラが整っていない山間部や小さい島、発展途上国などで簡単に電気の仕組みを提供できる。これは、他の電力ではなかなかできないことです。
オフグリッドが可能なことは、太陽光発電における大きな特徴といえるでしょう。
時間と発電量を調整できない
私たちの現在の生活方法では、常に電力が欠かせません。そして、必要な電力の量は、時間とともに変化します。
電気の仕組みとして難しいのが、「発電する量」と「利用する量」は同じにしないといけないこと。
そんな私たちの生活に合わせて、現在の発電方式は3つの電源構成で成り立っています。
電源の性格 | 例 | 特徴 |
ベースロード電源 | ・原子力 ・石炭火力 ・一般水力 ・地熱 | ・コスト低 ・出力一定 ・24時間出力可能 |
ミドル電源 | ・天然ガス ・LPガス | ・コスト中 ・出力の変動が可能 ・24時間出力可能 |
ピーク電源 | ・石油火力 ・揚水式水力 | ・コスト高 ・出力の変動が簡単 ・24時間出力可能 |
まずは最も値段が安く、安定して発電ができるベースロード電源で発電します。続いて、需要の増加に合わせて、ミドル電源やベースロード電源で発電します。
このようにして、なるべく電気の無駄がないようにしているのです。
対して、太陽光発電は、太陽のエネルギーを利用します。そのため、日中にしか発電ができません。また、太陽が弱い時間には、あまり発電ができないでしょう。
もしくは、太陽が出る時間によっては、発電しすぎて困ることにもなるかもしれません。出力抑制などは、まさにその結果です。
このように、「ベースロード電源」「ミドル電源」「ピーク電源」のどれとも性格が異なるのです。
そのため、再生可能エネルギーの登場に合わせて、発電システム自体を考えなければならなくなっています。
この状況を打破するために注目されているのが
- 蓄電池
- 水素発電
- CCS(CCU)
などの技術です。
近年の技術開発は、再生可能エネルギーの特徴とともにあると言っていいでしょう。
発電費用が高い
太陽光発電の発電コストはどのくらいなのでしょうか。
2014年の基準ではありますが、石炭火力・LNG火力発電の2倍い費用となっています。また、他の再生可能エネルギーと比較しても、費用は大きいです。
他の再生可能エネルギーと比較してずっとFIT価格が高いのは、そのためです。
費用の内訳の部分を見てまず気づくことは、「燃料費」が0円のこと。これは、太陽を使うので当然ですね。
続いて、「運転維持費」も比較的安価格になっています。太陽光発電システムは、仕組みが簡単のため、一度導入してしまえば手間がそこまでいらないためです。
では、どこが高いのか。
それが、「資本費」と書いてある部分。つまり、私たちにとっては、ソーラーパネルなどの「設置費用」です。
発電費用は今後は安くなる
他の再生可能エネルギーのほうが安いなら、他のエネルギーを利用すればいいのではないかとも思いますが、太陽光発電は将来性が最も高いエネルギーなのです。
2030年において予想されている費用を見てみましょう。
CO2対策費まで考えれば、ベースロード電源である石炭火力やLNG火力よりも安い費用となっています。
ここまで費用が落ちる理由は、今で高額だった「設置費用」が安くなるから。
2014年から2030年になると、30%ほど価格が下がることが見込まれています。
ただし、太陽光発電をいつ始めればいいのか?というと、安くなるのを待つよりも、実は早く始めたほうがお得になります。
「住宅用太陽光発電の売電価格が決まる仕組み」をみれば、理由がわかるので、気になる方は是非ご覧ください。
太陽光発電の「今後」
発電費用が安くなると予測されている太陽光発電。では、太陽光発電は、今後実際にどうなっていくのでしょうか。
日本における太陽光発電
日本における太陽光発電の位置づけ
「日本における」太陽光発電を考えたときに、特に重要となるポイントは6点です。
- プラスの位置づけ
- 自国生産のエネルギー
- 太陽光発電産業
- 非常用電源
- マイナスの位置づけ
- 土地や人の値段
- 島国
- ???
- 原発問題
エネルギー輸入国の日本でも、自国で生産できるエネルギーである
日本は、ほとんどのエネルギーを輸入に頼っています。
2017年のデータでは、約90%ものエネルギーを他国より輸入していました。今後、奇跡的に高品質の化石燃料が見つかったりしない限りは、この現状を変えることは難しいでしょう。
しかし、太陽光発電は、日本でも発電が可能です。
もしも、あと10年で、発電が可能な住宅の屋根などにソーラーパネルが設置されたとしましょう。すると、日本の電力需要の30%以上を賄うことができます。
輸入の割合が大きい日本にとっては、とても大きな自国エネルギー源なのです。
太陽光産業をおさえれば、実質的にエネルギー輸出国になることも可能
そしてもう一つ、太陽光産業としての側面です。
もともと電機部品に強い日本ですので、ソーラーパネルや蓄電池が大きな市場ととらえられます。もしもこの市場を日本がリードできれば、間接的に、エネルギー輸出国ともいえるでしょう。
現在は、ソーラーパネルのシェアは海外地域が占めています。日本における太陽光発電の補助金は、日本のメーカーを頑張らせる目的もあるのです。
災害が多い日本では、非常用電電源として価値がある
太陽光発電の特徴の一つである「オフグリッド」は、災害の多い日本で価値があります。
日本は、普段は停電の回数がとても少ない国です。2017年のデータでは、1年あたり0.14回しか停電が起きません。時間でみても、1年間あたりたった20分の停電時間です。
しかし、大きな災害によって、停電がいきなり発生します。
2011年の東日本大地震後には、計画停電含めて1年間に平均500分の停電時間がありました。
「自家発電」の重要性を身に染みてわかっている国が日本です。そのため、相対的に太陽光発電に対する価値は高くなります。
日本は土地や人の値段が高く向かない
日本は何といっても、土地や人件費が高いです。たいして、太陽光発電は、どこでも発電が可能です。ならば、土地がたくさんあって、人件費も安いところでやるのが一番でしょう。
その観点から、日本は太陽光発電に向きません。
特に、大型の水素発電の技術が開発されれば、「海外の砂漠などで発電し、エネルギーとして日本に持ってくる」ことが最も効率よくなります。
ただし、住宅用太陽光に関しては、この限りではありません。
なぜなら、屋根の値段は「無料」だからです。
日本においても、住宅用太陽光発電は、今後も導入は加速されていくでしょう。
島国のため、他国と連携できない
太陽光発電システムが、ヨーロッパなどでどのように活用されているかご存じでしょうか。実は、A国で発電した電気を、B国で利用する。といったことも行われています。
このメリットは、B国でまだ太陽が出ていなくても、太陽が出ているA国で発電した電気を利用できることです。逆に、A国としても、余った電気をB国に活用してもらえます。
このような「他国との系統連系」は、日本にはハードルの高い方法です。
他国から電線を引いてきて使うこともできませんし、発電した電気は、すべて日本で使わなければなりません。
そのため、蓄電池などの技術が特に求められています。
原発問題
日本でエネルギー問題を考えるときに必ずでるのが、原発の問題です。
2011年の原発の事故以降、日本の電源構成は大きく変化しています。実際に、それまで30%ほどあった割合が、0~1%にまで急落しました。
原子力発電は、ベースロード電源としての役割と、CO2の排出量を出さない低環境負荷エネルギーとしての役割があります。
2030年に向けて、日本政府は原子力発電の割合を約20%にする前提で動いています。そして、その数値を踏まえて、太陽光発電など他の電力の動向も決まります。
その良し悪しはここでは述べません。しかし、他国に比べて、原子力発電の導入に慎重さが求められる国であることは間違いありません。
どちらにしても、日本の太陽光発電を考える上では、原子力発電の動向に注意が必要です。
太陽光発電の普及割合
太陽光発電は、ここ数年で大きく普及してきました。特に、産業用の太陽光発電が大きく伸びています。
住宅用太陽光も、固定価格買取制度以降は順調に普及しています。
ただし、単年の増加量でみると、ここ数年は伸びが小さくなっています。そのため、「太陽光発電は下火だ」などと言われる原因になっています。
しかし、それはあくまでここ数年だけ。むしろ、2010年代前半の増加量が異常だっただけであり、やっと本来の成長曲線に乗るようになりました。
将来の住宅用太陽光発電の導入予測としては、今以上の伸びが予測されています。
上のグラフは、「導入・技術開発加速ケース」の場合ではありますが、確かに2020年以降には、むしろ伸びが加速していく予測です。
特に皆さんが気になる「戸建て住宅」について、主なポイントをまとめました。
導入量 | タイプ | 2030年の予測 |
年間 | 新築 | ・年間25.5万棟に太陽光発電が導入される ・新築住宅・新築戸建て住宅は今よりも減少 ・新築戸建て住宅のうちの、約90%に導入される |
年間 | 既存 | ・年間19.5万棟に太陽光発電が導入される ・住宅ストックはあまり変わらない(現時点で2700万棟) ・1%弱の住宅が、毎年太陽光発電に変わっていく |
累積 | 合計 | ・550万棟に太陽光発電が導入されている ・約20%の戸建て住宅に、太陽光発電が導入されている |
電源構成(エネルギーミックス)
太陽光発電そのものは、今後も伸びが期待されています。
では、日本の電力全体に対して、どの程度の割合になるのでしょうか。
ちなみに、「日本の電力全体を、どのような発電方法で構成しているか」を表しているのが、電源構成(エネルギーミックス)という言葉です。
2030年の日本の電源構成のうち、太陽光発電の割合は7%とされています。
思ったより少ないイメージを持たれるかもしれませんが、もともとエネルギー輸入国の日本にとっては、とても大きい電源となります。
ちなみに、どうしてここまで太陽光発電や他の再生可能エネルギーが伸びるのか。
その答えは、「温室効果ガス排出量」を下げる目標があるからです。
2030年には、CO2排出量(エネルギー起源)を9.3億トンに減らす目標があるのですが、これは2016年より20%も低い値。
同じ値を維持をするのでさえ難しいため、今の状態ではもちろん達成できません。
その目標を達成するために、いかにグリーンな電力を増やせるかがポイントになるのです。
キーワード
今後の太陽光発電を考える上で、特に重要なキーワードをまとめました。
キーワード | 概要 |
日本版コネクト&マージ | ・系統制約の解決策 ・日本のエネルギー需給全体を安定的にする考え方 ・太陽光発電を普及するために必須 |
ZEH(ぜっち) | ・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略 ・太陽光発電システムとHEMsやエネファムを組み合わせる ・住宅の多くに取り入れられる |
ストレージ・パリティ | ・蓄電池が「補助金なしで」経済性をもつ ・「太陽光発電×自家消費」が進む |
ゼロ円設置 | ・誰もが太陽光発電を始めやすくなる ・第三者所有モデル(TPO) ・電力購入契約(PPA) |
環境価値取引 | ・太陽光発電の電気は普通の電気よりも高い値段になる ・自家消費してもさらにお金がもらえる ・排出権取引や炭素税などと深い関係 |
世界における太陽光発電
太陽光発電の普及量
世界全体でみても、太陽光発電は順調に伸びています。
上のグラフは、年間の導入量の推移ですが、日本が近年の伸びが減少しているのに対して、世界全体では単調増加しています。
累計の導入量を見ると、その傾向はよくわかります。
まさに、ぐんぐんと伸びているのが確認できると思います。
太陽光発電は、世界で見ても今後が期待されている分野なのです。
国ごとの違い
では、太陽光発電は、どのような国で人気なのでしょうか。
そして、日本の順位はどのくらいなのでしょうか。
まず、2018年までの累積導入量では、中国が1位、日本は3位となっています。(IEA PVPSより)
順位 | 国 | 累積導入量 |
1 | 中国 | 176.1 GW |
2 | アメリカ | 62.2 GW |
3 | 日本 | 56.0 GW |
4 | ドイツ | 45.4 GW |
5 | インド | 32.9 GW |
6 | イタリア | 20.1 GW |
7 | イギリス | 13.0 GW |
8 | オーストラリア | 11.3 GW |
9 | フランス | 9.0 GW |
10 | 韓国 | 7.9 GW |
2018年単年の導入量で見ると、1位が中国なのは変わりませんが、インドが2位に躍り出て、日本は4位に後退しています。 (IEA PVPSより)
順位 | 国 | 2018年導入量 |
1 | 中国 | 45.0 GW |
2 | インド | 10.8 GW |
3 | アメリカ | 10.6 GW |
4 | 日本 | 6.5 GW |
5 | オーストラリア | 3.8 GW |
6 | ドイツ | 3.0 GW |
7 | メキシコ | 2.7 GW |
8 | 韓国 | 2.0 GW |
9 | トルコ | 1.6 GW |
10 | オランダ | 1.3 GW |
順位だけではなく、数値にも目を向けてみましょう。
驚くのは、中国やインドの近年の伸び率です。
今までの累積の導入量に対して、中国は25%、インドは30%以上を2018年の導入が占めています。
エネルギー大国で、太陽光発電の拡大が起きているのです。
最後に:太陽光発電を始めよう
太陽光発電は、誰もが始められるものです。
仕組みがわかったら、ぜひ、自分でも太陽光発電を始めてみませんか。