太陽光発電を検討するときなどに「ZEH(ゼッチ)」を聞くことが良くありますが、どのような意味が知っていますか?
ZEH(ゼッチ)やHEMS(ヘムス)など、横文字で並べられるとよくわからなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そもそもZEH(ゼッチ)とは何か、何が実現できるのかなどについて解説します。
ZEH(ゼッチ):エネルギー量が「創る≧使う」の住宅

ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy Houseの略で、「快適な室内環境を保ちながら、年間消費するエネルギー量の収支が概ねゼロ以下になる住宅」のことを指します。
2030年までに日本は温室効果ガスの排出量を2013年比で26%削減する必要があり、それを実現するには家庭部門から40%も削減する必要があるとされています。
ZEHは「創エネ×省エネ×快適な住環境」を実現させる基準と言えます。
2014年に閣議決定されたエネルギー基本計画では、2020年までに標準的な新築住宅でZEHを実現、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現することを掲げています。
ZEH(ゼッチ)実現のために必要なこと【要件】

ZEHは、建造物の構造体の「高熱化基準」+「設備の効率化」による省エネと、住宅での創エネでエネルギー収支ゼロの実現を目指します。
具体的には以下のような要件が必要になります。
- 強化外皮基準
- 基準一次エネルギー消費量の省エネ
- エネルギー収支を正味ゼロ
つまり、上記省エネ条件および太陽光発電等の創エネでエネルギー収支ゼロを達成した住宅を「ZEH」と定義しています。
なお、あくまで評価するのは「エネルギー量」であって、「お金」ではありません。
断熱
断熱性能の高い住宅は「極力エネルギー消費を必要としない住宅」であり、その分省エネに繋がります。
平均的な家庭の電気代でも大きな比重を占め、消費電力も大きく、使用時間も長いのがエアコンです。
断熱性能の高い住宅は、省エネしながらも快適な環境で過ごすことができます。
ZEHでは省エネ基準よりも厳しい強化外皮基準(外皮平均熱貫流率:UA値)が設けられています。
外皮平均熱貫流率(UA値)とは、住宅から床・壁・開口部などを通って外へ逃げる熱量の平均値です。値が小さいほど熱が逃げない、断熱効果の高い住宅であると言えます。
地域区分 | 省エネ基準 | ZEH基準 |
1地域 (旭川等) | 0.46 | 0.4 |
2地域 (札幌等) | 0.46 | 0.4 |
3地域 (盛岡等) | 0.56 | 0.5 |
4地域 (仙台等) | 0.75 | 0.6 |
5地域 (つくば等) | 0.87 | 0.6 |
6地域 (東京等) | 0.87 | 0.6 |
7地域 (鹿児島等) | 0.87 | 0.6 |
8地域 (那覇等) | ‐ | ‐ |
例えば6地域(東京等)では、外皮平均熱貫流率(UA値)が省エネ基準0.87に対してZEH基準は0.6となっており、省エネ基準よりもさらに27%も強化していることがわかります。
また以下のような事項も省エネ基準に準拠させることが必要とされています。
- 平均日射取得率(ηA値):住宅にどれだけ日射が入ってくるか
- 気密:空気の流れを遮断して、気圧や温度変化の影響を受けにくくする
- 防露性能:結露を防ぎ、カビ・ダニ・住宅の腐食を防ぐ
具体的には、高性能断熱材や高断熱窓等を利用します。
設備の効率化
創った電気を上手に活用し、省エネをおこなうこともZEHを実現するうえで重要です。
ZEHでは、以下の評価対象設備のエネルギー消費量においてエネルギー消費量計算を行います。
- 暖房
- 冷房
- 給湯
- 換気
- 照明
大掛かりに見えますが、簡単に行える部分もあります。
例えば、一般の電球を電球型LEDランプに替えれば約85%の省エネに繋がります。
この省エネに関しては基本的に再生可能エネルギーによる消費電力削減量はカウントしませんが、燃料電池等による削減量はカウントします。
一方、普段の生活の中で省エネできたかの結果は、毎月の電気代・ガス代の請求書の値段や総消費量などで判断する方が多いのが現状です。
これではどの家電の省エネができていて、どの家電が使いすぎているのかが判断できません。
そこで有効なのが、HEMS(ヘムス)です。
HEMSは家庭内で使うエネルギーの管理システムで、各設備の消費電力や発電量の見える化や自動制御・遠隔操作ができます。
いままで感覚で行っていた節電・省エネが、HEMSにより自らエネルギーをコントロールし、効率的に省エネをすることが可能になります。
創エネ
大幅に消費エネルギーの量を減らすことができたとしても、消費エネルギー自体を完全にゼロにすることは私たちが生活をおこなう上でかなり難しいです。
つまりトータルのエネルギーの収支をゼロ以下とし、ZEHを実現するには、「再生可能エネルギーを住宅単位で創ること」がもはや必須となります。
住宅でできる創エネは以下のようなものがあります。
- 太陽光発電
- 家庭用燃料電池
- 風力発電
風力発電は平均風速6m/秒ほどで1kWの太陽光発電と同等の電力が得られますが、現実的にそれほどの風が吹く地域は限られています。
この中で特に経済性メリットが大きいのが「太陽光発電」です。
ZEHを実現し、クリーンなエネルギー活用を実現しながら、住宅居住者にもメリットをもたらすには太陽光発電がキーとなります。
なお、創エネによるエネルギー供給量は、自家消費分に加え、売電分も対象に含めます。
広義のZEH(ゼッチ)は3種類ある<戸建住宅>
種類 | 強化外皮基準 | 省エネ基準 | 再エネを加えた一次エネルギー削減量 |
ZEH | ZEH基準 | 20%以上削減 | 100% |
Nearly ZEH | ZEH基準 | 20%以上削減 | 75%~100%未満 |
ZEH Oriented | ZEH基準 | 20%以上削減 | ‐ |
例えば全ての住宅に太陽光発電を導入したとしても、屋根の小さい家やそもそも太陽光発電の設置が向いていない家もあります。
そのため、全ての状況に同じ定義をはめるのではなく、状況に応じてZEHの定義を3種類に分けています。
【ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)】
外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギ
ー等により年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの住宅
【Nearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)】
『ZEH』を見据えた先進住宅として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネル
ギー設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の一次エネルギー消費
量をゼロに近づけた住宅
【ZEH Oriented (ゼロ・エネルギー・ハウス指向型住宅)】
『ZEH』を指向した先進的な住宅として、外皮の高断熱化及び高効率な省エ
ネルギー設備を備えた住宅(都市狭小地及び多雪地域に建築された住
宅に限る)
ZEH Orientedのみ対象となる住宅が限定されています。また、再生可能エネルギーの「創エネ」・エネルギー収支が要件になっていません。
都市部狭小地は北側斜線制限対象の用途地域等で、かつ敷地面積が85㎡未満の土地で、多雪地域は建築基準法で規定する垂直積雪量が100㎝以上の地域を指します。
このように地域特性や事情に合わせて、広義ではこの3種類をZEHと呼びます。
なお、カッコ書きで記された『ZEH』は、狭義のZEHとして、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスのみを指します。
ZEH(ゼッチ)を実現する住宅にとってのメリット

光熱費の節約になる
ZEHは省エネおよび創エネをおこなうこととイコールですので、その分電力会社などからエネルギーを購入しなくて済みますので、光熱費の節約に繋がります。
光熱費の節約を目的としてZEHを検討する場合はそのために投じる費用も考慮することが大切です。
50万円節約するために100万円支払っていては金銭面の収支はマイナスになってしまいます。
補助金が出る場合がある
ZEHは、温室効果ガス排出量削減のため国全体で推し進めている施策であり、ZEHを導入する場合、補助金申請ができます。
例えば、2020年一般社団法人環境共創イニシアチブは新築を建築・購入する個人のに以下のような補助金を出しています。
【対象】
- 『ZEH』
- Nearly ZEH(寒冷地・低日射地域・多雪地域に限る)
- ZEH Oriented(都市部狭小地の2階建ておよび多雪地域に限る)
補助金が出るだけあって、Nearly ZEHとZEH Orientedの対象地域が通常の定義よりも厳しくなっています。
【条件】
- ZEHロードマップにおける「ZEH」の定義を満たしていること
- SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与(設計、建築、改修、販売)する住宅であること
【補助金額】
60万円/戸
また、蓄電システムを導入する場合は、2万円/kWh、費用の3分の1、20万円のいずれか低い額が60万円にプラスで加算されます。
なお、ZEH支援事業については先着順です。補助金額は毎年変わるのでよく確認しましょう。
快適な住環境が手に入る
断熱効果の高い住宅作りによって、快適な住環境を手に入れることができます。
室温を一定に保ちやすく、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業の調査では、約8割の方が「部屋が暖かく、暮らしやすくなった」と回答しています。
リビングは暖房で暖かくても、脱衣所がとても寒いなんて方も多いのではないでしょうか。
この建物内の急激な気温差から体調に悪影響を及ぼすことを「ヒートショック」と言います。
ZEHを実現することで、ヒートショックを防止し、生活におけるストレスも軽減できる点は魅力的です。
資産価値が上がる(保ちやすい)
ZEHは将来的に物件を売却した場合、ZEHでない住宅よりも資産価値が評価されやすくなると言われています。
これは不動産評価の項目の一つに2016年4月より「BELS」が追加されたためです。
BELSとは「建築物省エネルギー性能表示制度」のことで、建物を省エネ性能という観点から評価したものです。
1~5段階で評価され、ZEHは4~5の評価がつくことが多いです。
よってZEHは建物全体の評価としても高く評価されやすくなります。
ZEH(ゼッチ)の費用相場

ZEH化する際の費用は機器やグレードによってまちまちで明確には決まっておらず、公表されているデータも乏しいのが実情です。
しかし一般的な相場としては250~300万円と言われています。
これは太陽光発電システム(100~150万円)程度が含まれた値段です。
先述の補助金や資産価値等もトータルで考えると経済合理性の判断は難しいですが、それなりにはかかると思っておいても良いでしょう。
ZEHではないが、太陽光発電のみ導入も◎
ZEHを実現するには強化外皮基準など建築から考える必要がありますが、経済性メリットをより多く求めていきたい方には太陽光発電のみ導入するという選択肢も有効です。
太陽光発電は発電した電気を自家消費して電気代を削減するだけでなく、売電収入を得ることもできます。
太陽光発電は天候に左右はされるものの、年単位や長期でみるとある程度の発電量も想定がつくため、費用対効果も見出しやすいです。
しかし、太陽光発電で経済合理性があるのは、適正価格で設置できた場合です。
太陽光発電システムのメーカーは同じでも販売店によって価格差が大きいのが太陽光発電の特徴で、中には経済性メリットの見いだせない価格で販売している業者もいるのが現状です。
みんなの太陽光発電では、多くの方が一般的な太陽光発電の設置費用相場よりもお得に設置できることを目指しています。
お財布にも、環境にも優しく、そして災害対策にもなる太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。