家庭用蓄電池を買うなら太陽光の電気は捨てたほうが得な理由

蓄電池の価値は「マイナス」

蓄電池の価値

停電時の対策となる蓄電池。

現在、太陽光発電と組み合わせることで、太陽光発電の自家消費を増やす方法として注目もされています。

しかし、その注目はあくまで将来を見越したもの。今の時点では「電気を捨てるだけ」に比べても、経済的な価値はマイナスです。

すなわち、蓄電池を買って自家消費をするくらいなら、電気を捨てたほうがマシということです。

本当にマイナスになってしまうのか、そして、いつになればプラスになるのか。しっかりシミュレーションしてみましょう。

「蓄電池で自家消費を増やしましょう。お得です。」こう言ってくる業者には注意が必要です。蓄電池で利益を上げることは、2020年ではほとんど不可能です。

蓄電池による収益は25~60万円

蓄電池の収益

まずは、蓄電池によってどれだけの収益(利益ではありません)があるかを計算してみましょう。

自家消費率は20~50%増える

蓄電池をいれることによる一番のメリットは、昼に発電した電気を夜に使用できることです。

これにより、太陽光発電の自家消費率があがります。

たとえば、太陽光発電の容量を5kWとしたときには、自家消費率が20%から50%増加することになります。

蓄電池と自家消費
ポストFITを見据えた太陽光発電と蓄電池のあり方(IEEJ)より作成

自家消費率の上り幅は、蓄電池の容量によって異なります。

蓄電容量が大きければ大きいほど、自家消費率は増えます。ただし、ある一定の蓄電容量を超えると、自家消費率の伸びは少なくなります。

また、蓄電容量が大きければ大きいほど、価格やサイズも大きくなってしまいます。

そのため、一般的な家庭用蓄電池は、4~10kWhほどが最適な容量となることがほとんどです。

  • 蓄電池の容量は、4~10kWhほど
  • 自家消費率は20~50%増加する

忘れがちな「蓄電ロス」

蓄電池を導入したときに忘れがちなのが、蓄電池の充放電による「電気のロス」です。

今までであれば、発電した電気のうち、自家消費をしない分はすべて売電ができました。

しかし、蓄電池を使う場合には、充放電のロスが発生してしまします。そのため、自家消費をしない分が全て売電できるわけではありません。

充放電ロス

このロスは、およそ自家消費量増加分の10%となります。つまり、自家消費率が30%から70%になったならば、充放電によるロスは、(70-30) ÷10で4%となります。

蓄電池の有無自家消費率売電率ロス率
なし30%70%0%
あり70%26%4%

ロスの分だけ、売電量が少なくなってしまいます。

蓄電池による収益の計算結果

それでは、蓄電池がない場合に比べて、蓄電池がある場合はどれだけ収益が上がるか見てみましょう。

比較するのは、先ほどのグラフにでてきた5つの場合です。このそれぞれの蓄電容量で、自家消費による節電額と、売電額がどうなるかを計算します。

年間でどのくらい違いが出でるか見てみましょう。

計算方法
電気料金契約:東京電力スタンダードS(50A)
自家消費率:上図の通り
充放電ロス:自家消費量の10%
年間電気使用量:6,123kWh
月間電気使用量:年間電気使用量/12
年間PV発電量:5,966kWh
月間PV発電量:年間PV発電量/12
売電価値(FIT期間終了後):10円/kWh
蓄電池の充電:昼の間のみ(夜間充電なし)
蓄電池の収益計算
蓄電容量節電額売電額合計差額
蓄電池なし6.0万円4.2万円10.2万円
4.2 kWh9.8万円2.9万円12.7万円+2.5万円
6.2 kWh11.6万円2.2万円13.8万円+3.6万円
8.9 kWh13.3万円1.6万円14.9万円+4.7万円
13.9 kWh15.3万円0.9万円16.2万円+6.0万円

上の結果を見てわかる通り、蓄電池を入れたほうが、年間で2.5万円~6万円分電気を有効活用できるとわかりました。

さて、蓄電池の寿命は、10~15年と言われています。

もしも蓄電池を10年後に取り換えることを考えれば、1つの蓄電池を導入したことによるメリットは、先ほどの年間の利益を10倍した25万円~60万円となります。

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蓄電池による費用は100万円以上

蓄電池の費用

続いて、蓄電池の費用を見てみましょう。

先ほどの容量の蓄電池を買うにはいくらかかるでしょうか。

日本の相場

まず、経済産業省の蓄電池に関する資料によると、2016年度の寿命10年の蓄電池の価格は、20万円/kWhとなっています。ただし、この価格には、工事費は入っていません。

工事費分が値下がりしたとして、単純にこの金額を当てはめるのであれば、次のようになります。

蓄電容量価格
4.2 kWh84万円
6.2 kWh124万円
8.9 kWh178万円
13.9 kWh278万円

テスラパワーウォール

蓄電池の黒船となる可能性が高い蓄電池が、テスラ社のパワーウォールという商品です。

容量は13.5kWhとなっており、税込み価格で108.9万円。テスラ社のHPに記載の設置工事費40万円~55万円を含めれば、およそ160万円となります。

これは、先ほど示した日本の相場の半分ほど。圧倒的な低価格となっています。

やはり蓄電池は「損」なのか?

蓄電池の利益計算結果

蓄電池の利益

さきほどの収益と費用をまとめて、蓄電池による利益を計算してみましょう。

蓄電容量利益収益費用
4.2 kWh– 59万円25万円84万円
6.2 kWh– 88万円36万円124万円
8.9 kWh– 131万円47万円178万円
13.9 kWh– 218万円60万円278万円
13.5 kWh
(テスラ)
– 100万円60万円160万円

計算結果はやはりマイナス。

コストパフォーマンスに優れたテスラですら、費用が半額以下にならなければ太刀打ちできません。

さらにいえば、これはFITがおわったときの売電金額を基にしています。FITが終わる前に蓄電池をいれると、

これが、蓄電池の現状なのです。

蓄電池の目的は、あくまで災害対策

ただ、だからといって、蓄電池自体がだめなわけではありません。

蓄電池を「利益目的」で買うのは全くお勧めできないだけです。

蓄電池のメリットは、電気を貯められることです。それは、停電が起きたときなどの災害対策として効力を発揮します。

停電時間
実は大きく違う、各国の年間停電時間(資源エネルギー庁)より

日本は本来停電がとても少ない国です。

しかし、2011年のように、いきなり大規模な停電が起きる可能性があります。

太陽光発電だけでも停電対策となりますが、単体では昼にしか利用ができません。また、天気によっては発電が不安定でしょう。

このような状況でも安心して電気を使えるようにするために、蓄電池を導入するのです。

それから、「環境に良い電気を自分で使いたい」という方にも蓄電池はお勧めできます。環境価値の創出にももってこいです。

以上のことから

  • 災害対策(夜の電源として)
  • 環境価値

この2点のために蓄電池は買うべきであり、そのためのお金が先ほどのマイナスの利益額なのです。

蓄電池が得なのではなく、太陽光発電がお得

いやいや利益になると見せられました!

という方のよくある勘違いとして、「太陽光発電+蓄電池」の利益額を見せられている可能性があります。

たとえば、太陽光発電単独であれば100万円の利益が出るところ、太陽光発電+蓄電池を入れることで20万円の利益になるといった具合です。

システムの種類利益額
太陽光発電100万円
蓄電池-80万円
太陽光発電+蓄電池20万円

本来は100万円の利益が出るところを、蓄電池を入れたばっかりに80万円も損をしてしまっています。

さらにいえば、このような業者は、太陽光発電+蓄電池の利益額自体も都合よく見せている可能性があります。

たとえば、ネット上でシミュレーションできるある会社では、維持費用を入れていなかったり、電気の価値を過大評価していました。その結果、同じ条件でありながら、80万円以上も高い利益額かのように表示していました。

利益の過大評価

もしもこのようなシミュレーションに当たってしまうと、最悪です。

さきほど+20万円だと思っていた利益額も、実際は-60万円だった。ということにもなります。

太陽光発電にしても、蓄電池にしても、事前のシミュレーションには十分にご注意ください。

ストレージパリティに向けて

では、いつまでも蓄電池は経済的にメリットはないのか?

それは、わかりません。

しかし、将来は経済的にもメリットを持つと確信しているのが、今の日本と世界の流れです。

逆に、経済的なメリットを持つようにできなければ、SDGs太陽光発電によるエネルギーミックスの達成が非常に困難になってしまいます。

だからこそ、なんとか蓄電池の値段を下げて、世界に広めようと皆が頑張っているのです。

近年蓄電池が注目されているのは、「消費者にとっていいから」ではなく、蓄電池が将来必須であることが明らかになっているから。というのが、正しいかもしれません。

ちなみに、蓄電池をいれることに経済的なメリットがある水準のことを、ストレージパリティと呼びます。

2020年に太陽光発電を始める人は、FITの期間が終了するのは2030年です。

2030年にストレージパリティが達成されているのか、注目です。

まとめ:捨てたほうが得な理由

蓄電池は、収益に対して費用が大きすぎて、必ずマイナスになります。

それを踏まえて、タイトルの「家庭用蓄電池を買うなら太陽光の電気は捨てたほうが得な理由」に回答しましょう。

先ほどは、自家消費をしない分の電気は「安い価格で売る」ことにしていました。

では、自家消費をしない分の電気を「捨てる」ことにした場合、蓄電池の収益はどうなるでしょうか。

先ほどの上の図の、青い部分がまるまるなくなってしまう場合です。蓄電池をいれたときの収益が大きくなります。

余った電気を捨てた場合と、余った電気を蓄電池で使った場合を比べた結果が下の表です。

蓄電容量利益収益費用
4.2 kWh– 46万円38万円84万円
6.2 kWh– 68万円56万円124万円
8.9 kWh– 105万円73万円178万円
13.9 kWh– 185万円93万円278万円
13.5 kWh
(テスラ)
– 67万円93万円160万円

以上、電気を捨てたほうが得な理由は、蓄電池の値段が高すぎるからです。

みなさんも、蓄電池のメリットとデメリットをしっかりと見極めて、正しく向き合いましょう。

そして、太陽光発電で損しないためには初期費用を下げることが重要です。

お得に設置したい場合、一括見積サイトにて複数社見積りをとって検討することが最も早く、やり取りも難しいものではありません。

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できるだけ多くの情報を仕入れて、素晴らしい太陽光ライフにしましょう!

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