オーナー必見!屋根貸し太陽光発電の4つのリスク

屋根貸し太陽光発電とは、「集合住宅」もしくは「マンション」のオーナーの方が考える太陽光発電です。無駄にしている建物の屋根を活用して、収入を得ることができます。

また、見方を変えれば「設置費用0円(無料)で太陽光発電を始められるサービス」とも言えます。

日本で広まる太陽光発電の中でも、ますます注目を集める屋根貸し太陽光発電について、特徴と気を付けるべきリスク・デメリットを解説します。

屋根貸し太陽光発電とは

太陽光発電

屋根を貸してお金がもらえる

屋根貸し

屋根貸し太陽光発電とはなにかを一言でいえば、「屋根を貸してお金をもらう資産運用」です。

よくある不動産の運用方法は、部屋を貸してお金をもらうことです。それとほとんど同じで、貸すものが屋根になったと考えればいいでしょう。

建物の屋根には、太陽光が降り注いでいます。その太陽光は、ソーラーパネルを設置すれば電気に変換することができます。そして電気は、お金になります。

いまや建物の屋根は、お金を生み出す「資産」といえるのです。そして、その運用を可能にするのが「太陽光発電」というわけです。

「第三者所有モデル」で費用が発生しない

第三者所有

屋根貸し太陽光発電の特徴は、建物の持ち主に費用が発生しないことです。太陽光発電の設置や運用は、すべて契約先の事業者が行います。そのかわり、太陽光発電システムの持ち主も、その契約先の事業者になります。

要は、自分の建物に無料で太陽光発電は設置されますが、その太陽光発電は自分のものではありません。

  • 屋根をかしてお金をもらう
  • 無料で太陽光発電が設置される
  • 太陽光発電は自分のものではない

このような太陽光発電の契約形態を「第三者所有モデル(TPO)」といいます。

ちなみに、このような第三者所有モデル、またそれに近いものには、いくつか種類があります。

  1. 屋根貸し
  2. リース
  3. 電力販売(ソーラーPPA)

どの契約でも、「設置費用が0円で自分の建物に太陽光発電設備がつく仕組み」ということは変わりません。太陽光発電について詳しい人は、聞いたこともあるでしょう。

この中で、「屋根貸し」太陽光発電の特徴は、「マンションや集合住宅のオーナー」向けであるということです。

モデルオススメ対象者
屋根貸し建物の所有者 = 建物での電気の利用・契約者
・マンションオーナー
・集合住宅オーナー
リース建物の所有者 ≠ 建物での電気の利用・契約者
・戸建て
・工場
・お店、小売店
電力販売リースと同じ

その理由は、太陽光発電で作った電気をどうするか?という仕組みによります。

電気の契約・使用は自由

屋根貸し太陽光発電では、オーナーにとっては、ただ屋根を貸すだけです。屋根を貸した相手は太陽光発電で電気を創ることになりますが、オーナーにとってはほとんど関係がありません。

そのため、電気の契約や使用は全くの自由になります。

「リース契約」の場合は、創った電気は建物所有者のものになります。しかし、建物に住んでいる人がたくさんいると、誰がどれくらい電気を使うのか?を把握しなければなりません。また、「電力販売」の場合には、別途それぞれ電気の契約をしなければなりません。

このような手間が必要ないというのが、屋根貸しモデルのメリットになります。

非常用電源として利用できる

ソーラーパネルなどの太陽光発電システムは自分のものではありませんが、契約によって「災害時には非常用電源として利用できる」ということがほとんどです。

屋根を貸してお金をもらうだけではなく、非常用電源として利用できることもメリットといえるでしょう。

リスク1:20年間以上の長期契約

砂時計

屋根貸し太陽光発電のメリットを様々お伝えしましたが、その実リスクやデメリットもあります。もっとも注意する必要があるのが、契約がおよそ「20年間以上」になることです。

なぜ20年以上になるのかというと、設置事業者は20年間太陽光発電を続けることで利益を計算しているからです。

建物の屋根を貸す側にとっては、貸している期間だけ賃料をもらえればいいかもしれません。しかし、屋根を借りて太陽光発電を設置する側にとっては、最初にお金を投資して、順々に回収をしていきます。

この回収期間がおよそ10年、そしてそのあとの10年が業者の利益になります。

太陽光発電のFITの売電期間が「~20年」であること、ソーラーパネルの寿命が「25年~30年」であること。この2つの理由から、早く取り壊しをされてしまったりすると困るわけです。

複雑な賃貸借契約が必要

屋根貸し太陽光発電では、「建物の所有者」と「発電事業者」の間で賃貸借契約を結びます。

このとき、例えば発電している期間を20年間と設定するとしても、実際にはパネルを施工したりする「準備期間」が必要になります。そのため、契約期間は必ず20年以上になります。

ただし、民法604条においては、賃貸借の期間は20年間を超えられないという規定があります。また、「屋根を貸す」という契約は、借地借家法の適応を受けないと考えられています。

そのため、通常の賃貸借契約と比較して、特別な契約方法をとる必要があります。このとき、考えられる契約は次の3つです。

  1. 「地上権設定契約」を用いる
  2. 20年間を超えないように賃貸借契約の主体を切り替える
  3. 「使用貸借」と「賃貸借」を組み合わせる

まず、建物所有者の方にとっては、1はお勧めできません。「地上権」は、とても強い権利であるため、簡単に相手に認めるべきではないからです。この契約方法では、建物所有者の同意なく地上権に担保権が設定されていしまう可能性もあります。

続いて、2の方法は、リスクは下がりますが、手間と費用が掛かってしまう方法になります。かなり大規模の「屋根貸し太陽光」を行う場合はいいでしょうが、小規模な場合はむかないでしょう。

多くの方の参考になるのは、3の「使用貸借と賃貸借を組みあわせる方法」になります。東京都環境後者が発行する、太陽光発電「屋根貸し」契約書モデルでも、この方法が推奨されています。

2の方法に比較するとリスクは大きくなります。たとえば、先ほどお話しした発電が開始されるまでの「準備期間」には賃料が発生しません。

いっこうに発電が開始されない場合には賃料がもらえなくなってしまうので、契約書の中で「売電開始日又は●●年●月●日のいずれか早い日」のように、契約期間を設定する必要があります。

・借地借家法の適応を受けない
・「使用貸借」と「賃貸借」を組み合わせた契約が必要

建物の経年劣化と修繕計画を見込む必要がある

20年もの契約が前提となると、建物は当初より確実に劣化します。すると、最悪「20年間もパネルが設置できなかった」という事態になりかねません。

そのため、設置をするタイミングで「発電事業者が」劣化の予測をする必要があります。

屋根を貸すほうがリスクを負う必要はないですが、正しい情報を開示する必要性は発生します。そして、もしその情報に重大な誤りがあった場合には、貸主がその責任を負わなければなりません。

また、途中で修繕を行うこともあるでしょう。建物が覆われる修繕が行われば、太陽光で発電ができなくなってしまう可能性があります。

契約の際は、最初からそのような期間を設定しておくのが普通です。ただしそれは、その期間分の賃料はもらえないことを意味します。また、もしも想定より修繕が長引いたり、予期しない修繕が必要になった場合には、その期間分の売電を補償をする必要があります。

場合によっては、賃料収入が0になるだけではなく、それ以上の金額を支払わなければいけない可能性もあります。

・劣化リスクは負わなくていいが、正確な情報開示が必要
・修繕期間分は賃料をもらえない。長引けば補償が必要

お互いの中途解約の可能性

20年間もの間の契約だと、他にも様々なリスクが生じます。

  • 相続
  • 買収・合併
  • 倒産
  • 自然災害

相続などは、「手間」が増えるだけで済むかもしれませんが、屋根を貸していた先が倒産した場合や、自然災害が起きてパネルが壊れた場合など、予期しない中途解約も発生するでしょう。

屋根を貸したものの、お金も手に入らず壊れたソーラーパネルだけが残ってしまったということにもなりかねません。また、貸している側も、途中で何か解約をしようと思っても重い解約金がかかることが想定されます。

そのため、保険に入る必要があったり、保証金の取り決めをする必要があります。ただし、契約としてリスクを減らすことは可能ですが、その分費用が発生したり、結局お金が戻ってこないということも考えられます。

20年間屋根に他の契約ができない

20年もの間長期契約を結ぶということは、他にいい選択肢が出た場合にも「20年間変更ができない」ことを意味します。

太陽光発電分野は、まさに日進月歩の成長を遂げています。コストも下がり、新しい契約方法も広がりを見せています。

そのような環境を考えたときに、20年間分の方針を決めてしまうということは柔軟さを失わせます。

屋根貸し太陽光発電を考える人は、「屋根を貸さない」VS「屋根を貸す」の2つの勝負で考えがちです。その2つであるならば、屋根を貸したほうがお金にはなるでしょう。

しかし、そもそも「屋根も資産」であることが当たり前の世の中になってきています。それならば、「屋根をAにXの方法で貸す」VS「屋根をBにYの方法で貸す」で比較するべきでしょう。

20年間もの契約を「屋根を貸さないよりはいい」ということでしてしまうのは、のちの選択肢を狭めるリスクといえるかもしれません。

・20年間もっといい屋根の貸し方ができなくなる
・「屋根を貸さない」VS「屋根を貸す」で比較は時代遅れ
・「屋根を誰にどの方法で貸すか」というベストな方法を探る

リスク2:雨漏り・反射光トラブル

雨

「太陽光発電設備を設置していることのリスク」は、屋根を貸している側が負うことになります。

代表的なリスクとしては、以下の4つが考えられます。

  • 雨漏り
  • 反射光
  • 火災
  • パネルの落下

太陽光発電では、施工の際に屋根に穴をあける場合があり、その施工が原因で雨漏りトラブルが発生する可能性があります。また、その影響はすぐにはわからず、時には数年たってから被害にあうこともあり得ます。

また、「ソーラーパネルが太陽の光を反射し、他の住宅の方に悪影響を及ぼすトラブル」も報告されいています。周りの住宅の方にとっては、太陽光発電をしているのはあくまで「その建物」です。たとえ責任が発電事業者にあったとしても、建物所有者が物理的・精神的被害を受ける可能性があります。

太陽光発電システムが原因でおきる火災」についても念のため考えておく必要があります。ただし、火災の発生件数は通常の住宅と比較しても少なく、とくに最近の太陽光パネルではほとんど起きないとされています。

最後に、パネルの落下などで他人に被害を負わせた場合です。このような場合でも、被害を負った側にしてみれば、あくまで悪いのは「建物所有者」です。損害賠償責任保険に入ることはもちろんですが、悪評がたってしまった場合などは、影響をうけることになるでしょう。

以上のようなトラブルは、もちろん「保険」をうまく使うことでリスクを減らすことも可能です。しかし、それはあくまで金銭的な部分のみ。対応に追われたり、精神的な苦痛が発生する可能性はあるでしょう。

・施工が原因で時間たってから雨漏りが発覚
・パネルの反射により、周辺住宅から苦情
・ほとんどおきないが、被害の大きい火災
・台風などでパネルが飛ばされ、他人に被害
・金銭的には保険でカバーできるが、風評被害や精神的苦痛

リスク3.自分のものではないものが屋根にあるということ

協力

「屋根貸し」太陽光発電では、自分のものでないものが屋根に置かれます。そのため、契約の段階で終わりではなく、いたるところで「協力」の必要性があります。

たとえば、ソーラーパネルの維持管理・メンテナンスをおこないたい発電事業者とは、「メンテナンスの時期」「人数」「時間」などを毎回調整する必要があるでしょう。設置工事のタイミングでは、大規模な足場が設置されることもあるかもしれません。

そして、そのような関係は「20年間」続きます。自分のものではないものを、屋根に置くということは、それ相応のデメリットとリスクが発生することを認識しておく必要があります。

リスク4.契約終了時(20年後)どうなる?

最後のリスクは、契約を完走した後の話です。基本的には、契約の最後は「ソーラーパネルを撤去してもらう」か、「無償譲渡で譲り受ける」ことになります。

一見契約終了後にタダでもらえるならもらったほうがよさそうですが、その場合「撤去費用」を負担する必要があります。しっかり経済性を踏まえて判断しましょう。

また、20年後に撤去してもらうとした場合でも、正直どのような形になるかは不明です。なぜなら、「屋根貸し太陽光発電の20年間の契約を完走した人は存在しない」からです。

太陽光発電のFIT制度が始まったのは、ここ10年の出来事です。まだまだ「出口」の実績にとぼしい中で契約をするということ自体がリスクと言えるでしょう。

今から始める人にとっては、20年後は2040年です。その世の中で太陽光発電がどうなっているかを予測するのは至難の業です。そのリスクは許容したうえで契約をしましょう。

・屋根貸し太陽光発電の契約を完走した人は存在しない
・「モデルとなる実績がない」というリスクは許容する

自分が太陽光発電事業者になる選択肢も

運転

ここまで、屋根貸し太陽光発電の特徴とリスクを見てきました。

屋根貸し太陽光発電とは、言い方を恐れなければ「屋根の資産性を発電事業者にあげて、そのおこぼれをもらう」方法になります。

ただし、「おこぼれ」をもらうだけで意外と大きいリスクと手間が発生します。また、太陽光発電の「自家消費」ができないという観点からも、相当にもったいない屋根運用の方法です。

ならば、最初からそのリスクを自分がかぶり、より大きな利益を手にするのも合理的な判断でしょう。契約の手間もありません。

屋根貸しでお金が手に入るということは、自分が太陽光発電をしたらそれ以上にお金が手に入るということです。20年間の屋根貸しの賃料が200万円なら、自分でやれば500万円以上手に入る可能性があります。

もしもあなたの建物の屋根が空いているのならば、その「資産」をぜひ有効活用してください。

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屋根に降り注ぐ太陽光の価値は?

毎月、約8,000

あなたは、いつまで無駄にしますか?